研究課題/領域番号 |
17K15877
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
猪口 剛 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20572580)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 死後画像 / 死後血管造影 / 椎骨動脈損傷 |
研究実績の概要 |
当研究は、椎骨動脈損傷に対する死後血管造影CTの有用性の検討を目的としている。平成30年度は初年度から引き続き、エンバーミングポンプを用いた死後血管造影法の確立を目指した。当初の計画に沿って、開胸後、大動脈にカニューレを挿入、大動脈基部および左右鎖骨下動脈をクランプし、造影剤を注入し、良好な画像が得られるかどうかを評価した。結果、造影剤が頭頸部血管に適正に注入されず、大動脈にとどまる事例が散見された。これは、開胸時や縦隔臓器処理の際に、小血管が損傷され同部から造影剤が漏出してしまうことが原因と考えられた。そこで、当初の計画を変更し、直接椎骨動脈にカテーテルを挿入し、同部から造影剤を注入する方法を採用することとした。解剖所見にて頸椎骨折が確認された5例と頭蓋内損傷が確認された2例に対し椎骨動脈造影を行った。また、頸椎骨折事例の3事例に対しては椎骨動脈を剖出し組織学的な検討も加えた。結果、頭蓋内損傷事例においては造影CT所見上、異常所見は認めなかった。頸椎損傷事例2例においては造影CT所見上、異常所見は認めなかった。2か所の椎間板離開を認めた1例においては、造影CT所見上、同損傷部に狭窄が確認され、病理組織を確認したところ、内膜の破綻と解離が確認された。また、第2頸椎椎体骨折が確認された1例においては、造影CT上、骨折部に対応した血管に異常所見を認めないものの、頭蓋内の椎骨動脈内腔に陰影欠損が確認され、病理組織では、骨折部に対応した椎骨動脈に解離を疑わせる病変を認めたことから、同損傷から血栓が形成され、頭蓋内に移動した可能性が示唆された。一方、残りの1例は剖出時の際に血管が損傷され正確な評価が困難であった。以上のことから、死後造影CTは、椎骨動脈損傷を検出できる場合と、検出できない場合があることが明らかになった。今後も事例数を重ね、その診断価値を評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、カテーテルを大動脈よりアプローチし、エンバーミングポンプを用いて頭部血管造影する方法を確立し、椎骨動脈を造影する予定であったが、同方法での造影に難儀し、造影法の変更を余儀なくされた。また、想定したよりも対象事例となり得る頸部損傷を伴う事例の数が少なかった。そのため、期間内に予定していた事例数に対する椎骨動脈造影を行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、十分な事例数が確保できなかったものの、研究の結果は、死後血管造影が椎骨損傷の検索に有用である可能性を示唆している。引き続き、椎骨動脈損傷を有する可能性のある頭部外傷事例に対して死後造影CTを実施し、画像所見と組織学的所見を比較することにより、造影CTの椎骨動脈損傷に対する有用性を検討していく予定である。適宜事例数が集まった時点で、検討課題について、知見をまとめ、学会発表や論文報告を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、造影法の確立に時間を費やし、当初予定していた事例数に達しなかった。来年度は造影を実行する事例の増加、およびそれに伴う組織学的・画像診断学的な検討にかかる費用や、学会発表などの増加が見込まれ、次年度請求額では不足することが予想されるため、その分の消耗品、検査依頼費、旅費などの予算が次年度使用額として計上されている。
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