本研究においては歯牙象牙質内のホスホホリン内の遊離アミノ酸のうちアスパラギン酸の光学異性体であるD体とL体のD/L比による年齢推定法に対し、従来の手技より簡便な手技に改良することを検討してきた。 これまでの期間で従来法で使用されてきた前処理が煩雑な樹脂カラムに対し、アミノ酸抽出カートリッジを使用した手技が有効であることが判明した。 さらに加水分解時に使用した濃塩酸によるエバポレーターの負担を軽減するため、濃塩酸の量を従来の1/3の量に変更し、アスパラギン酸の抽出が可能であると判明した。 本年度は上半期にガスマトグラフ質量分析計(GCMS)の不具合により使用ができず、実験がストップしてしまったが、他大のガスクロマトグラフ(GC)を使用し、実験を再開した。昨年度の課題であった、アミノ酸抽出用カートリッジを使用したD体、L体アスパラギン酸の検出時の分離に関しては、カートリッジの前処理法を検討することによってピークは低いもののそれぞれを分離することが可能となった。そこで10代後半から80代までの下顎第二小臼歯計40本より象牙質切片を、従来の1/3量の濃塩酸にて加水分解し、アミノ酸抽出用カートリッジを使用してホスホホリン内のアスパラギン酸を抽出、GCを利用してD-アスパラギン酸及びL-アスパラギン酸をそれぞれ検出した。しかしいずれも年齢推定のためのD/L比が安定しなかった。これはアミノ酸抽出用カートリッジによる手技の問題ではなく、使用した歯牙がいずれも-5℃の冷凍庫で保管していたとはいえ抜去後5年以上経過していたことが原因にあるのではないかと考え、現在、1年以内に抜去した下顎第二小臼歯を用いてカートリッジを用いたホスホホリン内のアスパラギン酸のD/L比と年齢との関係について比較検討中である。
|