研究課題/領域番号 |
17K15880
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 弘太郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (40574025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 危険ドラッグ / 合成カンナビノイド / 尿中代謝物 / 死後体内分布/再分布 / LC-MS/MS / GC-MS |
研究実績の概要 |
危険ドラッグ類のヒト代謝産物の高感度機器分析法の開発 研究の目的:合成カンナビノイドと側鎖の長いカチノン類(MPHPなど)では,代謝や体内分布の影響により,乱用者の尿から直接未変化体を検出する事が大変困難である.ヒト尿は採取にあたり最も侵襲性が少なく,救急外来等での採取も容易であり分析対象として極めて有用な試料である.この研究では、各種危険ドラッグ類の尿中代謝産物に焦点を当て,検出同定・定量法の開発を目指す.更には,危険ドラッグ類に対し①尿を主体とする法医解剖試料からのヒト代謝物の高感度分析法の開発 ②人間での代謝経路と体内分布の解明 ③警察試料や病院試料等の分析・鑑定への応用を目指す. 研究の方法:主に司法解剖により,危険ドラッグ等の使用が疑われる事例でのヒト臓器・体液(尿・血液等)試料の採集を施行する.また,警察・救急病院試料も適宜、研究対象とする.加えて、試料の入手にあたり法的,倫理的な問題がない場合、交通警察や救急部等の臨床各科にも協力を仰ぎ、多くの試料を収集する。加えて、過去に当教室で採取した試料も,適宜検討して研究対象とする.試料はまず、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS-MS) とガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)による含有物の特定あるいは推定を試みる.未知の物質に対してはデータベースや高分解能質量分析器による組成推定を行う.最終的な同定は純品とのマスクロマトグラムやマススペクトルの比較により行う. 研究の結果:これまでに,合成カンナビノイド2種についてその代謝物をヒト尿試料から検出・定量が可能であった.これらについて,うち1種についてはデータをまとめ学術雑誌Drug Testing and Analysisに論文が掲載された.もう1種についてもデータを採取して論文投稿の準備をしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に危険ドラッグ(合成カンナビノイド等)の使用が疑われた事例でのヒト臓器・体液(尿・血液等)を試料として,それらの代謝物の検索を行った. 試料に対して,液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS-MS) とガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)による代謝物の検出,同定あるいは推定を試みた.同定にはデータベースや高分解能質量分析器による組成推定を行う.最終的な同定は純品とのマスクロマトグラムやマススペクトルの比較により行った.検出・同定が可能であった試料については併せて対象代謝物の定量分析を実施した.加えて,論文投稿を目指して,分析手技の再現性検討や回収率,マトリックス効果の検討も行なった. これまでに,合成カンナビノイド2種についてその代謝物を実際のヒト尿試料から検出・定量が可能であった.これらについて,うち1種についてはデータをまとめ学術雑誌Drug Testing and Analysisに論文が掲載された.もう1種についてもデータを採取して論文投稿の準備をしている.
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今後の研究の推進方策 |
現在まで,当初の目的に沿った試料の採取,目的対象物の検出と同定,分析方法の確立・改良,論文報告等による研究成果の発信が概ね順調に進んでいる.よって,今後もこれまでの実験計画を踏襲,改良してさらなる成果達成を目指す.まだ未報告の合成カンナビノイド関与事例について,論文投稿に必要なデータ採取を終えた後,学術雑誌への投稿を行う予定である. 加えて,この研究で得た知見・結果を元にして他の薬毒物や自然毒についても,同様のプロセスを応用した研究と成果報告を目指していく.具体的には,眠剤中毒例,農薬中毒例について,採取試料や尿試料からの鑑定に有用な代謝物の検出・同定を試みている.更には,尿中代謝物よりも検出ウィンドウが長い曝露マーカー(アダクト等)についても,研究対象としての興味関心が有る.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 平成29年度は,主に消耗品や試薬の購入に申請額の殆どを費やした.当初は助成金の直接経費として,国際学会での成果発表のための旅費への一部使用を計画していた.しかし,消耗物品の購入,実験に用いる試薬や定性分析のための純品の購入に予定よりも多く支出が必要となってしまった.そこで,国際学会での発表を次年度へ変更し,平成29年度は物品の購入を優先して実験・分析とデータの整理に専念した.その中で,当初からの経費の振り分けに差異が生じてしまい,次年度使用額の差し引き額での差異が生じたものである. (使用計画) 平成30年度の計画の中で,昨年度未達であった国際学会での成果発表を行う予定である.その他の実験計画は当初の通り進める予定であり,昨年度からの差し引き額も含めて助成金の範囲内で実験・研究・成果発表を行う事を目指す.
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