危険ドラッグ類のヒト代謝産物の高感度機器分析法の開発 研究の目的:合成カンナビノイドと長い側鎖を持つカチノン類では,使用時の熱分解,体内での早い代謝や体内分布の影響により,乱用者の尿中に含まれる未変化体はごく微量であるため,これらを直接に検出する事は大変困難である.いっぽう,それらの代謝物はヒト尿中に比較的多く含まれるため,特異的な代謝物は使用マーカーとして鑑定に有用である.ヒト尿は採取にあたり侵襲性が少なく救急外来等での採取も容易であり,分析対象として極めて有用な試料である.この研究では、各種危険ドラッグ類の尿中代謝産物に焦点を当て,同定・定量法の開発を目指す. 研究の方法:主に司法解剖により,危険ドラッグ等の使用が疑われる事例でのヒト尿試料とその他臓器・体液(血液等)試料の採集を施行する.また,警察・病院試料も研究対象とする. 加えて,過去に当教室で採取した試料も検討して研究対象とする.試料は液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC-MS/MS) とガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)による含有物の特定,あるいは推定を試みる.未知の物質に対してはデータベースや高分解能質量分析器による組成推定を行う.最終的な同定は純品とのマスクロマトグラムやマススペクトルの比較により行う. 研究の結果:これまでに,合成カンナビノイド2種について代謝物をヒト尿試料から検出・定量が可能であった.これらのうち1種については学術雑誌Drug Testing and Analysisに論文が掲載された.もう1種についてもデータを採取して,国際法中毒学会で発表を行った.加えて,眠剤Zolpidemの中毒例について,ここでの研究手法を応用してデータをまとめ,学術雑誌Forensic Science Internationalにこの研究の論文が掲載された.
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