研究課題/領域番号 |
17K15884
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
越智 拓 藤田医科大学, 医学部, 助教 (70527704)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内因性カンナビノイド / ドーパミン / PC12 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドーパミンシグナリングに対する内因性カンナビノイドシステムの影響について、培養細胞モデルを用いて検討することを目的としたものである。今年度は、ドーパミン神経細胞モデルにおけるドーパミン産生・分泌に対する内因性カンナビノイドの影響について検討した。 ドーパミン神経のモデルとして、神経成長因子により神経細胞様に分化させたPC12細胞を用いた。これらの細胞に対し、鎖状脂肪族アルデヒドの一種であるヘキサナールを作用させることにより、ドーパミン分泌を誘導した。また、ヘキサナール処理と同時に、内因性カンナビノイド2-AGにて共処理することにより、ドーパミン分泌に対する内因性カンナビノイドの影響について検討した。細胞外に分泌されるドーパミンは、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて定量し、最終的な濃度は、培養細胞のタンパク量にて補正した。 ヘキサナール単独で処理した場合、細胞外に分泌されるドーパミンは、155±31 ng/mg proteinであった。一方、ドーパミンと2-AGとで共処理したPC12細胞において細胞外に分泌されるドーパミンは、ヘキサナール単独処理の場合に比し、有意に抑制された。また、この2-AGによるドーパミン分泌の抑制は、共処理する2-AGの濃度に依存的であった。 一般に、シナプス終末におけるドーパミン分泌は、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇によって惹起されることが知られている。またカンナビノイド受容体にはGi/oタンパクが共役しており、これらの受容体の活性化によって細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が抑制される。したがって、今回認められた2-AG共処理によるドーパミン分泌の抑制には、カンナビノイド受容体活性化を介した、細胞内カルシウム動態の変化の関与が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドーパミン神経のモデル細胞であるPC12細胞に対して、ヘキサナールで処理することにより、細胞外へのドーパミン分泌が誘導された。このドーパミンの分泌は、内因性カンナビノイド2-AGの共処理により有意に抑制されることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ドーパミン神経モデル細胞におけるドーパミンの細胞外への分泌が、内因性カンナビノイドにより有意に抑制されることが明らかになり、この抑制に細胞内のカルシウム動態が関与していることが示唆される。そのため今後は、内因性カンナビノイドによるドーパミン分泌抑制について、細胞内カルシウム動態に着目し、その分子メカニズムの解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書に基づき、研究活動に必要な物品を購入してきたが、細かいところまで調整するに至らなかった。次年度も同様に、研究活動に必要な試薬等の購入に使用する予定である。
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