研究課題/領域番号 |
17K15886
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
吉川 ひとみ 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (20392269)
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研究期間 (年度) |
2018-02-28 – 2022-03-31
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キーワード | 有毒植物 / 次世代シークエンス / 食中毒 / DNAバーコディング |
研究実績の概要 |
本研究では、有毒植物(モデル:イヌサフラン、バイケイソウ)及び食用山菜(オオバギボウシ)の混合物について、DNAバーコーディング領域の配列を利用して、混合物に含まれる有毒植物を同定する手法を開発する。昨年度までにrbcL、trnL、trnH-psbAの3領域について、次世代シークエンサーを用いてバイケイソウ、イヌサフラン、オオバギボウシを解析するために最適な実験条件および配列の解析手法を設定した。 今年度は、前年度に引き続き混合試料の作成及びDNA解析を行った。まず、一つの種のみを用いてNGSで配列解析を行い、ターゲット3種の配列に対しマッピングを行った。配列の前処理の条件を変更しても、他の種にマッピングされる配列が認められた。そこで、マッピングに利用した配列のうち何%以上確認されたら当該種が検出できたと判断する、閾値を設定することにした。検討の結果、5%に設定するのが望ましいと考えられた。 バイケイソウDNA:オオバギボウシDNAを1:1、1:10、1:24と混合したもの、イヌサフランDNA:オオバギボウシDNAを1:1、1:10、1:24と混合したものを作製し、それぞれtrnLおよびrbcL領域の配列を解析した。その結果、全ての試料で混合した種のDNA配列が確認されたが、両方の種の配列が閾値を超えたのは、1:1で混合した試料のみであった。1:10や1:24で混合した際、閾値を超えた一部の試料のみであった。 本研究は、ターゲットが未知の場合でも同定できるという利点があり、さらに実試料では中毒を起こす程度摂食していることから、胃内容物にある程度多く含まれると想定される。しかし、研究代表者が行った先行研究では、25倍量の食用山菜のDNAが含まれた場合でも、バイケイソウのDNAを検出することが可能であったことから、ターゲット特異的な手法より感度は劣ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
混合試料の解析を全て終了することができた。しかし新型コロナウィルスの影響により出勤回避をせざるを得なかったことから、研究3年目に予定していた、実際の食中毒事案の模擬試料、すなわち調理残渣と胃内容物の試料作製、配列解析を進めることができなかった。さらに、発表予定であった学会も中止され、成果発表を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である本年は、実際の食中毒事案を想定した試料、すなわち調理残渣と模擬胃内容物の作製および配列解析を行う。さらに学会発表、論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延により、出勤回避をせざるを得なくなり、実験の進捗が遅くなった。 参加予定であった海外の国際学会が中止になり、旅費使用が生じなかった。
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