本研究では、有毒植物(モデル:イヌサフラン、バイケイソウ)及び食用山菜(オオバギボウシ)の混合物について、DNAバーコーディング領域の配列を利用して、混合物に含まれる有毒植物を同定する手法を開発する。 前年度までに、rbcL、trnLの2領域について、次世代シークエンサーを用いてバイケイソウ、イヌサフラン、オオバギボウシを検出するために最適な実験条件および配列の解析手法を設定した。また、バイケイソウまたはイヌサフランDNA:オオバギボウシDNAを1:1、1:10、1:24と混合したものについて解析を行い、混合物であっても各々の種を確認することができた。 本年度は、実際の中毒事案を想定した試料を作製し、解析を行った。バイケイソウ、イヌサフラン、オオバギボウシの模擬調理残さ(茹でた試料)および模擬胃内容物を作製し、それぞれDNAを抽出した。その後、抽出したDNAを調理残さ、胃内容物ともに、バイケイソウDNA:オオバギボウシDNAを1:1、イヌサフランDNA:オオバギボウシDNAを1:1と混合し、配列解析を行った。その結果、trnL領域は全ての条件で混合に用いた種が確認され、trnL領域より長いrbcL領域は胃内容物のバイケイソウを除いて混合に用いた種が確認された。よって、調理残渣、胃内容物でも、混合物中の有毒植物の同定が可能であることが示された。また、trnL領域が検出に用いる領域としてより安定して使用可能であると考えられた。 本研究では、DNAバーコーディング領域の配列を利用して、混合物に含まれる植物種を同定する手法を開発した。生の植物だけではなく、DNAが損傷していると考えられる模擬調理残渣、胃内容物でも同定可能であった。今回は3種の植物をターゲットとして使用したが、これ以外のどのような植物でも同定できるという利点があり、広く応用可能と考えられる。
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