研究課題/領域番号 |
17K15887
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻 浩史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40633970)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | GDF-15 / リンパ腫 / 多発性硬化症 / Tumafactive lesion |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア機能を反映するGDF-15の臨床的意義を解明するための研究を行っている.これまで,髄液中のGDF-15が中枢神経系に浸潤するリンパ腫で上昇していることを示し,アルツハイマー病などの変性疾患よりも,中枢神経系の悪性腫瘍の診断に有用であることを示した.2019年度は,GDF-15以外に近年認知症や多発性硬化症との関連が報告されているPGRNに注目し,髄液GDF-15とPGRNを測定することで両疾患鑑別の有用性について比較検討した.この結果,髄液中のGDF-15は多発性硬化症と中枢神経系リンパ腫の鑑別においてPGRNより有用であることが明らかとなった. 2020年度は,多発性硬化症のなかでも中枢神経系リンパ腫と鑑別が困難であるTumafative lesionを呈する多発性硬化症,いわゆるTumafactive MS (以下TDL)についてGDF-15の有用性について検討した. 中枢神経系のリンパ腫4名,TDLを伴わない多発性硬化症(MS)9名,TDLを伴うMS3名の髄液中GDF-15とPGRNを測定した. GDF-15値は中枢神経系のリンパ腫 292.3 ± 143.8 pg/ml,TDLを伴わない多発性硬化症 64.9 ± 17.6 pg/ml,TDLを伴うMS 378.0 ± 273.4 pg/mlであった.前年度の結果と同様,髄液中GDF-15は中枢神経系のリンパ腫では,TDLを伴わない多発性硬化症よりも高値であった(P = 0.03)が,TDLを伴うMSとは差がなかった(P = 0.32).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルス感染症対策の業務が当たらに加わり研究の遂行ができなくなった.
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今後の研究の推進方策 |
臨床において中枢神経系リンパ腫と多発性硬化症の鑑別が困難なことがある.特に頭部MRIは両疾患とも類似の画像所見を示すことがあり,確定診断のために脳生検が必要となることもある.また中枢神経系のリンパ腫は,副腎皮質ステロイドにより一時的に消退することから,多発性硬化症と誤診されてしまうことがある.これまでの研究結果からはTumafative lesionを呈する多発性硬化症と中枢神経系のリンパ腫の鑑別は髄液中のGDF-15値からは鑑別できなかった. 今後は,検体数を追加するとともに,これまで有用性が報告されているIL-6, IL-10,CXCL13, sIL2Rなどと比較する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナウィルスのため,ほとんど研究が遂行できなかった.次年度には,追加の研究と論文投稿を行うため,研究試薬の購入,論文構成の費用に使用する.
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