研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症は,高齢化者社会と共に罹患者数が増加傾向にあり,社会問題となっている.アルツハイマー病の原因にアミロイドβ蛋白が,疾患感受性遺伝子にアポリポ蛋白Eのアイソフォームが関わってくる,これらの蛋白は神経細胞内の酸化ストレスに影響され,その細胞内の酸化を担うのがミトコンドリアである.最近,ミトコンドリア機能異常がアルツハマー病の発症と関係があることが報告されており,またミトコンドリア機能を反映するのが,GDF15(Growth/differentiation factor 15) という分泌性蛋白である. ミトコンドリア機能を反映するGDF15を臨床応用するために,患者髄液を用いた研究を行った.多発性硬化症と中枢神経系の悪性腫瘍(中枢神経系リンパ腫,神経膠芽腫)で髄液中のGDF15値を測定したところ,中枢神経系悪性腫瘍群で髄液中のGDF15値は有意に上昇していた.他に既報告で中枢神経系のリンパ腫の診断で有用とされているPGRN(Progranulin),IL6(Interleukin 6), IL10(Interleukin 10), CXCL13(C-X-C Motif Chemokine Ligand 13)の髄液値を測定したが,多発性硬化症例と比較し有意な上昇はなかった.この結果により髄液GDF15は,臨床症状,画像所見から鑑別が困難な中枢神経系脱髄性疾患と腫瘍性疾患の鑑別に有用であることが明らかとなった. 本研究から髄液GDF15値が臨床応用できることが判明し,アルツハイマー型認知症をはじめとする神経変性疾患の診断にも利用できると考えた.
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