研究課題/領域番号 |
17K15888
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
野田 和敬 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50456076)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 診断推論 / 人工知能 / 総合診療 |
研究実績の概要 |
病歴情報から疾患を推測する「診断支援システム」は未だ実用的なものが成立していない。その解決策として活用が期待されている医療ビッグデータであるが,既存のデータではうまく活用できない懸念がある。病歴情報を多く含む診療録データは相応の事前処理が必要であるというだけでなく,そもそも既存の診療録データには当初の目的を果たすに十分な病歴情報が含まれていない可能性があるからである。本研究では,過去のめまい患者の診療録データから,確率的潜在意味解析法(PLSA)等の手法を用いて病歴情報と診断との確率的因果関係の可視化と疾患予測モデルの構築を試み,従来の網羅的病歴収集による予測モデル構築の取り組みとの比較によって,その研究手法の特性と有用性を明らかにすることを目的とした。 平成29年度は,申請者が過去に取り組んだ「BPPV病歴研究」1)において網羅的に収集した病歴情報を対象として、ベイジアンネットワークの構築を試みた。因果関係をあらかじめ設定するなどモデル構築に際して細かな調整を引き続き行う必要があり、平成30年度の継続課題とした。一方、診療録データの病歴情報を対象としてベイジアンネットワークの構築を試みる取り組みについては、対象患者の診療録データからテキストマイニングソフトによって機械的な用語抽出を試みたが、有益な結果は得られなかった。そこで、診療録に記載されている内容から人力で意味を拾い上げ、そのデータを対象としてベイジアンネットワークモデルの構築を行うこととした。その作業には時間を要するため、引き続き平成30年度の実施課題とした。 1) Noda K, et al. Predictors for benign paroxysmal positional vertigo with positive Dix-Hallpike test. Int J Gen Med 2011;4:809-14.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
診療録データを収集してテキストマイニングソフトによる機械的な用語抽出や係り受け解析を試みているが、ベイジアンネットワークモデルの構築に有益なデータの整形結果が得られていない。診療録データからの情報抽出に付随する問題点の考察も本研究の目的であるため、引き続き、同様の取り組みを継続する。 加えて、診療録データの機械的な処理が高次元で達成できた状況を模擬的に作り出すため、人力による診療録データからの病歴情報抽出を行うこととした。この処理には時間を要するため、当初計画よりも研究の進捗が遅れる結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
病歴情報と疾患との確率的因果関係を算出するうえで、有益な情報が診療録データにそもそも含まれているのか否かを明らかにすることも本研究の目的である。そのため、診療録データの機械的な処理が高次元で達成できた状況を模擬的に作り出すことは有用と考えられる。本研究の第一段階として対象予定としていた診療録データ量は比較的少ないため、人力で診療録データから情報を拾い出す作業が最善と考え、その実行を進めることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れにより学会発表や論文投稿にまで至らず、論文の英文翻訳や校閲費、投稿料等に充当する予定としていた費用を平成30年度に繰り越すこととした。 テキストマイニングソフト、ベイジアンネットワーク構築ソフトの保守費用延長とアドオンプログラムの購入費用、情報収集を目的とした医療情報や人工知能等の関連学会への参加費・旅費に充当する。
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