研究課題
目的は3つで、1.交感神経がフレイル高齢者に心身の機能改善を示した作用機序を解明すること、2.交感神経活性化が認知機能にも保護的作用を示すかを研究すること、3.交感神経に着目したフレイルバイオマーカーの臨床的応用性を検討することである。1.ホルター心電図を用いた周波数解析を行い、交感神経を測定し、24時間血圧計にて自律神経の指標を測定した。フレイルとの関連のある血清レプチン濃度等と、交感神経機能とフレイルとの関連を検討した。69人の高齢者のうち、フレイル高齢者はフレイルでない高齢者より、血清レプチン濃度が有意に高値であった。さらに本来血清レプチン濃度が高値になると、視床下部を介した交感神経活性化が起こり、脂肪細胞燃焼、高代謝状態となることが知られているが、フレイル高齢者では交感神経の活性化が起こらず、フィードバック機構が破綻していることを示した。24時間血圧計と血清レプチンならびに交感神経との関連も認められず、フレイル高齢者では交感神経を含む自律神経機能の破綻を来たしている可能性を示した。これにより血清レプチンのフィードバックが起こらず、慢性炎症や筋の消耗が起こり、さらにフレイルを加速する可能性が示唆された。2.認知機能との関連では、交絡因子の影響を除いても、Mini-Mental State Examinationと血清レプチンは有意な負の関連を示し、交感神経の破綻が血清レプチンの高値状態を維持し、認知機能低下を促進する因子である可能性を示した。3.交感神経が低値であると、日中や、運動時など、本来交感神経が活性化され、血圧上昇が起こる状況であっても、フレイル高齢者において血圧上昇が認められず、縦断研究にて死亡率上昇の指標にもなっていることを明らかにした。これらにより交感神経はフレイルバイオマーカーとしての有用性を持つことが示され、実臨床で応用できる可能性を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度に予定していた1.老化関連因子との関連を解析 (横断研究)、2. 認知機能と交感神経との関連を解析(横断研究)、3. 交感神経の長期的作用の解明(前向きコホート研究)の3つの研究計画について、進捗は概ね順調である。1.に関して、英文論文にて発表を行った。2.については学会報告を終了し、英文論文投稿中である。3.については平成30年度をまたがる研究であり、現在進行中であるが、データ収集と症例の追跡は順調に行えている。
今後の推進方法は、交付申請書通りに行う。健常高齢者とフレイル高齢者での交感神経の有用性を縦断研究で確認中である。1次エンドポイントである死亡、2次エンドポイントであるフレイル状態への移行、要介護状態への移行、認知症の発症、肺炎、大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折、嚥下障害(経管栄養の開始)の発生があるか追跡を行っている。また、平成29年度の横断研究において、すでに英文論文に発表を行ったが、これとは別の横断研究結果のうち、学会報告を済ませたデータについて、英文論文を投稿中である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件)
Geriatrics & Gerontology International
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/ggi.13328
日本老年医学会雑誌
巻: 55 ページ: 136~142
10.3143/geriatrics.55.136
巻: 17 ページ: 2623~2625
10.1111/ggi.13174
臨床栄養
巻: 132 ページ: 22~27