研究課題
本研究の目的は3つあり、交感神経がフレイル高齢者に心身の機能改善を示した作用機序を解明すること、フレイル高齢者にとって交感神経活性化は認知機能にも保護的作用を示すかを研究すること、これまでのフレイル診断基準より、申請者の手法を用いたフレイルバイオマーカーの方が臨床的応用範囲が広く、世界で汎用されるものとなりうるか検討することであった。まず、フレイル高齢者は交感神経機能が低下し、大動脈弓や頸動脈に存在する圧受容体反射異常が起こり、血圧調整機構が破綻していることを示した。これにより、起立時、運動時など本来血圧上昇が起こる状況においても血圧上昇が起こらず、リハビリテーションや運動介入時に身体機能改善効果が乏しいことを解明した。次に、交感神経機能低下は認知症診断の一助となっているが、認知症患者において、日光浴、起居時間延長など交感神経機能改善効果をもたらす介入によりリハビリテーション効果が高まることを示した。この研究で同時に認知機能(Mini-mental state examination)も緩やかに改善し、交感神経の改善が認知機能に保護的役割がある可能性を示唆した。さらに、血清レプチン値を測定し、視床下部-血清レプチン値-交感神経のフィードバック機構がフレイル高齢者では破綻している可能性を示した。健常者で認められる血清レプチン値と交感神経の関連がなくなり、フレイル高齢者の食欲低下、栄養不良を引き起こし、さらなるフレイル状態を引き起こす負のサイクルに陥っている可能性を示した。様々な角度からフレイル高齢者に対する交感神経の役割を解明し、バイオマーカーになりうる可能性を示すことができた。なお、これらの成果として平成29年度から平成30年度に査読付きの英語論文6本を発表し、国際学会発表8回、国内学会発表9回行った。その他、ガイドラインの作成・出版を行った。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)
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