研究課題
家族性地中海熱は反復する発熱・漿膜炎を特徴とする常染色体劣性遺伝病で、原因遺伝子としてMEFV遺伝子が同定されている。臨床的に家族性地中海熱(FMF)が疑われる症例に対しMEFV遺伝子検査を行った。FMFの病態解明は近年急速に進んでおり、これまでの当科からの研究発表もそこに大きく寄与しており、全国の医療機関からの患者相談が増加し続けている。平成29年度は全国から146例の検査依頼があり、多くの不明熱患者の診断、治療に貢献することができた。本邦FMFの男女比はやや女性に多く、昨年度疑い症例146例のうち女性が85例(58.2%)を占めた。女性では月経が発作の誘発因子となるため、月経期の発作は子宮内膜症に類似した症状を呈する。当院産婦人科と協力し、月経期の発熱を契機に産婦人科を受診し、FMFと診断された症例を抽出したところ8例が該当した。すべての症例にMEFV遺伝子変異がみられ、コルヒチンが有効であった。8例中5例に子宮内膜症の合併がみられたが、子宮内膜症治療薬であるジエノゲストが投与された4例は、全例ともコルヒチンと同等あるいはそれ以上の発作抑制効果を示した。また、8例中3例で発症後の妊娠を認めたが、妊娠期間中は発作の出現がみられなかった。また、FMFに伴う胸膜炎症状が、月経随伴性気胸として長期にフォローアップされていた症例も存在した。家族性地中海熱は産婦人科通院患者の中にも存在する可能性があり、月経に関連して高熱や腹痛および胸痛を繰り返す場合には家族性地中海熱も鑑別に挙げる必要があると考えられた。以上の内容は共著として和文誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
発熱発作と月経の間に関連性を認めるFMF症例が一定数存在することを示すことができ、同様の患者や医療関係者に対する啓蒙としても非常に有用であったと考えられる。これまで診断が付かず、月経に関連する一過性の何らかの炎症と考えられていた症例が正しく診断される可能性を示せており、概ね当初の予定通りの進捗状況である。
上記のように女性患者では発熱発作と月経の間に関連性を認める症例が少なくないことから、当科で過去に遺伝子検査を施行した患者からも該当患者を抽出し、発作の特徴ならびに臨床像と遺伝型の関連を検討する。また、発作が月経に関連する患者群の特徴を月経に関連がない患者群の特徴と比較検討し、発作を誘発する因子の同定を行いたいと考えている。それらの結果から、患者の特徴に応じた、より適切な治療方法について検討し、得られた結果を本邦における診断、治療指針へ反映させていきたい。
概ね計画通りに研究を進めたが、想定よりもDNAシーケンスの費用が安価だったため若干の次年度使用額が生じた。次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて、遺伝学的検査における試薬代、シーケンス費用、通信費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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