名古屋大学医学部附属病院総合診療科(以下、本施設)に通院している慢性疲労症候群の患者で、本施設でこれまで実施してきた漢方治療・心理療法を行っても十分な治療効果が得られなかった患者を対象に、筋の異常緊張に着目したフィジカルアセスメントとストレッチやセルフマッサージ等の指導を加えた運動療法の治療効果を評価する臨床研究である。 当初、本施設に以前から通院している慢性疲労症候群(CFS)患者を対象に研究を行う予定だったが、長期間通院している患者では当初CFSと診断されていた患者でもその後の経過からCFSではないと判断できる患者がいたり、様々な治療介入が入っている患者がいたりと、不均一な群であることが判明した。そのため、研究対象を新規CFS診断患者と限定するように方針を変更したため、症例の集積に時間を要している。 令和元年度も介入対象となる症例の集積と運動療法の導入が活動の中心となった。本研究の評価項目の1つとして固有感覚(位置覚)の測定を行っている。角度計を用いて位置覚を厳密に測定すると、慢性疲労症候群患者では健常者や他疾患の患者と比較して位置覚に異常を認めることがわかってきている。さらにCFSの診断基準を満たすものの精神疾患など他疾患と診断される群と、それらの疾患を除外したCFS診断群とで、この固有感覚の障害に差が見られる可能性が示唆されてた。 令和2年度においても運動療法の効果について情報を集積するとともに解析をしていく予定である。固有感覚障害についても、慢性疲労症候群の診断に寄与する客観的指標となり得るか引き続き評価を進めていく。
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