研究課題/領域番号 |
17K15894
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三河 拓己 京都大学, 医学研究科, 教務補佐員 (90608051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 解糖系代謝 / ワールブルグ効果 / ガン化 / PGAM |
研究実績の概要 |
古くより知られた癌の代謝異常にワールブルグ効果がある。多くの癌で通常酸素状態でも解糖系が亢進し、解糖系酵素の多くの酵素の高発現が観察される。本研究課題では加齢と癌を含めた生活習慣病の深い相関に対して、解糖系代謝異常の観点よりアプローチを行い、代謝異常が老化や癌化、炎症に結び付くメカニズムの解明を目的とし研究を進めている。なかでも我々が以前に細胞老化抑制遺伝子として同定した解糖系酵素の一つホスホグリセリン酸ムターゼPGAMに着目し、種々のPGAMモデルマウス(PGAMトランスジェニック, 変異型PGAMトランスジェニック、PGAMノックアウト)を樹立し、癌化や炎症、代謝経路への影響について解析を行っている。これまでに、PGAMトランスジェニックマウスでは化学皮膚発癌実験による腫瘍形成が亢進することを見出し、出現した腫瘍の頻度やサイズおよび病理診断から、PGAMトランスジェニックマウスが野生型マウスに比較して腫瘍を形成しやすいこと、さらにこのマウスでは一部の腫瘍が悪性化していることを突き止めた。また、PGAMによる腫瘍形成のメカニズムを解析する過程で新規のPGAM結合因子Xを同定した。現在は、PGAMによる発癌促進や代謝の変化において、結合因子Xとのタンパク質間相互作用の重要性やその分子メカニズムの解明を目指している。 今後さらに研究を進め、PGAMの結合蛋白協調作用による生物学効果を探求し、その結合阻害・破綻による癌抑制への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題ではPGAMと結合因子Xのタンパク質間相互作用を介した発癌機構の解明を目標としており、既にPGAMトランスジェニックマウスにおける腫瘍形成促進を明らかにしている。当該年度では培養細胞を用いてPGAMによる発癌促進効果における結合因子Xの関与について検討を行い、結合因子XがPGAMと協調的に機能する可能性を見出し、その分子メカニズムの一端を解明した。また、PGAMノックアウトマウスの解析も順調に進行しており、PGAMの異常がマウス個体に及ぼす影響についての知見が集まりつつある。 さらにPGAMと結合因子Xとのタンパク質間相互作用が発癌過程において重要となることが予想されることから、今後タンパク質相互作用を重点に解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後PGAMと結合因子Xとのタンパク質相互作用の重要性や発癌促進におけるPGAMの酵素活性の関与を検討するため、種々の変異型PGAMに対する表現型解析を行いPGAMによる発癌促進の分子機構を明らかにする予定である。 さらに、変異型PGAMトランスジェニックマウスやPGAMノックアウトマウスについても解析を継続し、トランスジェニックマウスとは反対にPGAMが抑制される条件で代謝や腫瘍形成に対する影響を検討する。
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