研究課題
過敏性腸症候群(IBS)は、健常人と比べ糞便中の腸内細菌叢構成の違いが指摘されているが、腸管粘膜上皮により近い上皮表面のムチン層内の細菌叢の違いとその病態への影響については不明な点が多い。当研究の目的は患者の腸管粘膜上皮表面の細菌叢に疾患特有性や病勢との関連があるかを明らかにすることである。これまでの研究で、下部消化管内視鏡による粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の採取方法の条件検討を行い、次世代シーケンサーによって、粘膜上皮表面のムチン層の菌叢の標準的解析方法を確立した。この解析方法を用い、IBS患者と非IBS患者における粘膜表層細菌叢の解析を行った。IBS患者の大腸粘膜上皮表面のムチン層内の細菌叢の構成と糞便中の細菌叢構成との違いや、さらに健常人とIBS患者との比較などを行い、糞便と粘膜表層の菌叢の構成は異なることがわかり、IBS患者と非IBS患者では糞便での菌叢だけでなく粘膜上皮表面のムチン層内の細菌叢の構成が違うことが示唆された。現在サンプル数を増やし解析中である。さらにIBSの同一患者で、臨床上2度の内視鏡検査をされた患者から粘膜表層細菌を採取し、IBS患者での長期間での粘膜表層細菌の変化の解析にも成功した。今後、IBSの患者の中でIBSの病勢、治療抵抗性、治療反応性と腸管粘膜上皮表面の細菌叢との相関を明らかにするためにIBS患者間での菌叢の違いを解析予定である。さらに、現在、IBSに対する糞便移植の効果の検討のための臨床研究を申請中であり、糞便移植の前後での粘膜細菌の変化の検討を予定している。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で、粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の標準的解析方法の確立を行った。粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の採取方法の確立と、次世代シーケンサーによる粘膜上皮表面のムチン層の菌叢の標準的解析方法を確立した。また、この解析方法を用い、IBS患者と非IBS患者で、粘膜表層細菌叢の解析を行っており、さらにIBSの同一患者で、2度の内視鏡検査をされた患者から粘膜表層細菌を採取し、IBS患者での長期間での粘膜表層細菌の変化の解析にも成功しており、進捗としてはおおむね順調と判断する。
今後、さらにIBS患者の症例数を増やし、IBSの病勢、治療抵抗性、治療反応性と腸管粘膜上皮表面の細菌叢との相関を明らかにする。また、現在、IBSに対する糞便移植の効果の検討のための臨床研究を申請中であり、糞便移植の前後での粘膜細菌の変化の検討を予定している。さらに、ショットガンシーケンスにより、菌叢構成のみならず、菌のもつ遺伝子の違いの比較解析も予定する。
治療介入の臨床研究が一部30年度からの開始となったことで、物品費やその他検査費用などの分が次年度使用額として生じた。30年度に治療介入患者などの解析を行い、次年度使用額として持ち越された研究費を使用する予定である。
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