研究課題/領域番号 |
17K15906
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
河尻 澄宏 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30445522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経内科 / 漢方 / 頭痛 / めまい / しびれ / エビデンス |
研究実績の概要 |
神経内科領域の漢方治療エビデンスの構築のためには、漢方薬のこれまでの知見を考慮し、数多くある症状の中でも、有効性が十分にあると想定される頭痛、めまい、しびれ症状に焦点を絞ることにした。エビデンス構築のためには、症例の蓄積が最重要と考え、頭痛、めまい、しびれの専門外来を週1回半日で開設した。これにより、頭痛、めまい、しびれを中心に症例の蓄積を行うことができ、これまでに、頭痛は84例、めまいは66例、しびれは25例を蓄積した。 解析方法の設定として、漢方薬の薬効評価、および患者の病態を明確にするために、初診時に処方した漢方薬に限定して解析することとした。有効、無効の判定は、初診時と薬を開始4-6週後の自覚症状評価システム (TOMRASS) の程度、頻度の両方が1段階以上改善しているものを有効、それ以外を無効とすることとした。これまで使用した漢方薬は、頭痛に対しては、苓桂朮甘湯11例、呉茱萸湯10例、五苓散9例など、めまいに対しては、苓桂朮甘湯21例、半夏白朮天麻湯6例、五苓散5例など、しびれに対しては、八味地黄丸12例などを蓄積した。頭痛に対する苓桂朮甘湯、呉茱萸湯、五苓散の有効率は63.6%、70.0%、55.6%で、めまいに対する苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、半夏厚朴湯の有効率は、52.4%、83.3%、60%で、しびれに対する八味地黄丸の有効率は25.0%となった。例えば苓桂朮甘湯の有効例の特徴は足の冷え、立ちくらみ、睡眠障害、不安、こりなどの自覚症状を持つという傾向は確認できた。漢方薬の有効率を調べるのではなく、どのような患者に有効かを明らかにするのが目的のため、統計解析するには症例がまだ不足している。エビデンスの構築には統計解析が必須であり、更なる症例の蓄積を必要とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はそれぞれの漢方薬の有効性評価の判定基準の設定に時間を要したが、設定以後は、頭痛、めまい、しびれの専門外来を開設したこともあり、頭痛、めまいに関しては症例の蓄積が順調に行われている。但し、しびれに関しては、有症状者の高齢者比率が高い影響で、有効性の評価に採用している当研究所独自の自覚症状評価システム(TOMRASS)の操作に若干の煩雑性があることから同意を得られない、あるいは継続が困難となる例が多くあり、症例の蓄積には少し遅れをとっている。 研究遂行に向けての研究協力者との協力体制は十分確立されており、密に連絡を取れる体制が取れている。 以上から全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
様々な漢方薬を使用していることもあり、統計解析まで含めた一つの薬に対する有意差を示すためには、非常に多くの症例が必要である。そのために、専門外来を通して、頭痛、めまい、しびれの症例の更なる蓄積を積極的に行っていく。 有効性評価の判定基準の設定次第で、解析結果が大幅に変化することがあり、非常に重要な点と認識している。そのため、有効性評価基準が適切であるかは定期的に検証していく。統計に関しても、適切な統計解析方法について、定期的に検証を行う。また、頭痛、めまい、しびれ以外の神経症状(例:顔面痙攣、眼瞼痙攣、片麻痺、自律神経症状)などの症例も蓄積し、一定のエビデンスを示せるように病態、漢方薬の有効性の評価を行っていく。進行状況が遅れていると判断されるような場合は専門外来の拡充も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は遠方での学会が複数あり旅費が多くかかる、またパソコンなど比較的高額の物品をいくつか購入する予定であり、費用は次年度のほうが多くかかる予定である。その他に関しては、おおむね本年度と同様と想定される。
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