研究課題/領域番号 |
17K15906
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
河尻 澄宏 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30445522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 漢方 / 神経内科 / 頭痛 / めまい / しびれ |
研究実績の概要 |
神経内科領域の漢方治療エビデンスの構築のためには、漢方薬のこれまでの知見を考慮し、数多くある症状の中でも、有効性が十分にあると想定される頭痛、めまい、しびれ症状に平成29年度に焦点をあて、平成30年度も継続した。エビデンス構築のためには、症例の蓄積が最重要と考え、平成29年度に開設した頭痛、めまい、しびれの専門外来を週1回半日で継続した。これにより、頭痛、めまい、しびれを中心に症例の蓄積を行うことができ、これまでに頭痛は115例、めまいは88例、しびれは36例を蓄積した。 解析方法は平成29年度と同様に、漢方薬の薬効評価、および患者の病態を明確にするために、初診時に処方した漢方薬に限定して解析することとした。有効、無効の判定は、初診時と薬を開始4-6週後の自覚症状評価システム (TOMRASS) の程度、頻度の両方が1段階以上改善しているものを有効、それ以外を無効とした。これまで使用した漢方薬は、頭痛に対しては、呉茱萸湯20例、五苓散15例、苓桂朮甘湯14例など、めまいに対しては、苓桂朮甘湯29例、五苓散9例、半夏白朮天麻湯7例など、しびれに対しては、八味地黄丸17例などを蓄積した。頭痛に対する呉茱萸湯、五苓散、苓桂朮甘湯の有効率は70.0%、55.6%、50.0%で、めまいに対する苓桂朮甘湯、五苓散、半夏白朮天麻湯の有効率は、44.9%、55.6%、57.1%で、しびれに対する八味地黄丸の有効率は35.3%となった。ただし、漢方薬の有効率を調べるのではなく、どのような患者に有効かを明らかにするのが最終目的のため、統計解析をするには症例がまだ不足している。エビデンスの構築には統計解析が必須であり、更なる症例の蓄積を必要とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例は少しずつ蓄積されている。但し、しびれに関しては高齢者の比率が高く、TOMRASSの操作に煩雑性を少し伴うことから同意を得られないことが多く、症例が頭痛、めまいほど症例が蓄積されていない。しかし、研究遂行には研究協力者との協力体制は得られており、全体としては「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
専門外来を活用し、症例の蓄積に引き続き務める。また、専門外来以外においてもTOMRASSに同意し登録されている症例も解析時に加える。解析するのに十分な症例数に達している処方に関しては、初診時の問診票と診察所見を有効、無効例で比較し、統計解析を行う。有効性評価基準が適切であるかも十分に検証する。統計解析の結果、どの処方が、どのような患者に有効であるか明らかになった段階で学会発表、論文などを中心に成果をだしていく。また、頭痛、めまい、しびれ以外の神経症状(例:顔面痙攣、不随運動など)は、統計解析するのに十分な症例を蓄積するのは困難と予想されるが、できるだけ多くの症例で多数例報告を行えるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は統計処理および成果の発表準備などで費用が想定以上にかかる可能性がある。本年度は昨年の繰り越しがあったこともあり十分に計画を遂行できるめどがたっていた。このため、全体としての研究計画の遂行の実現性を上げるために、次年度に繰り越すことにした。
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