脳神経内科領域の漢方治療のエビデンスを構築するために漢方薬におけるこれまでの知見を検討した結果、数多くある症状の中でも、有効性が十分にあると想定された頭痛、めまい、しびれ症状に研究期間の初年度から焦点を当てて、最終年度の今年度も継続した。エビデンス構築のために、症例の蓄積を重視し、頭痛、めまい、しびれ専門外来を初年度に新たに設置したが、最終年度も引き続き半日の週1回のペースで遂行した。これにより、頭痛126例、めまい99例、しびれ39例にまで蓄積された。解析方法は初年度と同様に、漢方薬の薬効評価および患者の状態を正確に把握するために、初診時に投与した漢方薬に限定して解析することとした。有効、無効の判定は、初診時と薬を開始4-6週後の自覚症状評価システム(TOMRASS)の頻度、程度の両方が1段階以上改善しているものを有効とした。これまで使用した漢方薬は、頭痛に対しては呉茱萸湯20例、五苓散17例、苓桂朮甘湯17例など、めまいに対しては苓桂朮甘湯33例、五苓散11例、半夏白朮天麻湯11例など、しびれに対しては八味地黄丸26例などとなった。有効率に関しては、呉茱萸湯 70.0%、五苓散58.8%、苓桂朮甘湯52.9%など、めまいに対しては苓桂朮甘湯48.4%、五苓散63.6%、半夏白朮天麻湯54.5%など、しびれに対しては八味地黄丸38.4%であった。有効例の考察においては例えば苓桂朮甘湯は足冷えを随伴する傾向があるなど、これまでの知見にないことがわかってきた。
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