研究課題/領域番号 |
17K15910
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 秀幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60787810)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 膵がん / プレシジョンメディシン / クリニカルシークエンス / 網羅的がん遺伝子検査 / がん遺伝子パネル検査 / 個別化治療 |
研究実績の概要 |
今年度は北海道大学病院がん遺伝子診断外来を受診した膵がん患者を対象に実臨床におけるがん遺伝子パネル検査を用いた膵がんクリニカルシークエンスの現状および問題点につき以下のことを明らかにし、英語論文に報告した。 1.筆者らの検討では実臨床における膵がん患者を対象としたクリニカルシークエンスにおいてPS:0, PS:1症例はそれぞれ全体の75%、10%であったが、PS:2症例も15%の症例で認められた。また、標準治療がすべて終了していない患者の割合は65%と、比較的早い段階でがん遺伝子パネル検査を申し込まれる患者も多く、膵がんの場合はその病勢を考慮すると、より早期からの適応が本来は望ましいと考えられた。 2.膵がんクリニカルシークエンスでは核酸の品質不良あるいは収量不足による再生検率は25%であり、特に手術検体で14%、EUS-FNA検体で18%、ERCP検体で100%の再生検率であった。 3.膵がんクリニカルシークエンスの有用性としてはActionable遺伝子異常の検出率は100%、Druggable遺伝子異常の検出率は35%であったが、最終的に遺伝子情報に基づいた治療を実施できた症例は全体の10%に過ぎなかった。 4. 膵がんクリニカルシークエンスにおいて5%の症例において膵発がんの原因と考えられる二次的所見が検出された。 5.膵がんクリニカルシークエンスにおいて初回の外来診察から解析レポートの完成および患者への結果説明までのturnaround timeはそれぞれ20日、26日であった。検査申し込み後の生存期間中央値は10.3ヶ月であり、比較的早い段階で検査を希望される方が多い結果となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施場所が北海道大学病院から慶應義塾大学に異動し、体制が変わったため、作成したオリジナル膵がん個別化治療遺伝子パネルを使用した研究が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
慶応義塾大学病院における膵がん症例を対象に本研究で作成したオリジナル膵がん個別化治療遺伝子パネルを使用した研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究実施場所が北海道大学病院から慶應義塾大学に異動し、体制が変わったため、使用を予定していた臨床検体が使用できず、作成したオリジナル膵がん個別化治療遺伝子パネルを使用した研究が一時止まったため。今年度に慶應義塾大学病院の症例を対象に新たに研究を再開する計画としている。
|