研究実績の概要 |
自己免疫性膵炎(Autoimmune pancreatitis; 以下、AIP)は原因不明の慢性膵炎であり、高IgG血症やリウマチ因子などの自己抗体が陽性で、ステロイド治療への良好な反応が特徴とされる。IgG4関連疾患の膵病変の可能性が高いが、その発症には環境因子に加え遺伝的素因の関与が示唆されている。申請者は、AIP患者のコホートを用いて(n=27)、健常人(n=30)を対照群とした、high-throughput sequencerによるgermline variantの解析を行った。その結果、本疾患の病態と関連する複数の候補遺伝子多型を同定した(Fujibayashi S, Biochem Biophys Rep 2016)。これらのバリアントのうち、P2RX3 (c.195delG)及びTOP1 (c.2007delG)が新規のAIP感受性遺伝子と考えられた。さらに、AIPの再燃(rs1143146, rs1050716, HLA-C (c.759_763delCCCCCinsTCCCG), rs1050451, rs4154112, rs1049069, CACNA1C (c.5996delC), CXCR3 (c.630_631delGC).)、膵外病変の併存(rs1050716, rs111493987)に関連するバリアントの特定に成功した。P2RX3及びTOP1の膵炎発症における意義を検証するため、マウス膵腺房オルガノイドを用いたゲノム編集を計画したが、研究期間内に結果を得ることができず、今後の課題としたい。
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