ヒト末梢血CD16-単球(以下単球)の単離を行い、無刺激、免疫複合体(IC)刺激、TLR8のアゴニストであるR848による刺激およびICとR848による同時刺激の各条件におけるTNFαおよびTL1Aの産生について検討した。TNFαは6時間、18時間、24時間、48時間、72時間いずれの時点でもIC+R848同時刺激条件で最も高値であった。一方、TL1Aの産生はいずれの検体も48-72時間で産生の増加を認めるが、検体毎に高値を示す条件が異なり、一定の傾向を認めなかった。 末梢血単球では各Fcレセプターのうち、FcγRII、FcγRI、FcαRは発現を認め、FcγRIII、Fcα/μR、FcμRは発現を認めなかった。 こうした結果から、IgAについてもFcαRを介して単球を刺激すると考えられたため、ヒトIgAによる刺激培養を行ったところ、IgA単独刺激ではTNFα、TL1Aいずれも産生増加は認めなかったが、ICとの同時刺激によりTNFα、TL1Aいずれも産生が亢進した。 炎症性腸疾患ではIgAやIgGといった免疫グロブリンにより被覆化された便中細菌が増加しており、こうした細菌が単球由来の抗原提示細胞をFcレセプターを介して刺激すると考えられる。そこで、末梢血単球をヒトIgGにより被覆化したマイクロビーズ(径1μm)により刺激を行うことで、TNFαやTL1Aの産生について検討した。末梢血単球を無刺激、IC刺激、マイクロビーズ単独およびヒトIgG被覆化マイクロビーズによる刺激培養を行ったところ、ヒトIgG被覆化マイクロビーズで刺激した条件において、6時間、48時間、72時間のいずれの時点でもマイクロビーズ単独刺激よりもTNFαの産生が亢進し、IC単独刺激条件よりも高値であった。一方、TL1AについてはIC単独刺激条件では産生が亢進したが、その他の条件では産生の亢進は認めなかった。
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