本年度は新規に同定した膵炎関連遺伝子の機能解析を行うため、該当遺伝子のcDNA配列をサブクローニングした発現ベクターを入手して各変異の導入をsite-directed mutagenesisにて実施した。導入変異の確認をダイレクトシークエンスで実施し、約70種類にのぼる変異体の構築が可能であった。変異導入による蛋白発現レベルの変化を評価するためにC末端のアミノ酸配列を抗原エピトープとする特異抗体を用い、野生型発現ベクターとナンセンス変異・フレームシフト変異を有する変異体発現ベクターを293T細胞に強制発現刺させた。その結果、ナンセンス変異体・フレームシフト変異体では完全に特異バンドが消失することを確認した。ミスセンス変異体については蛋白発現レベルの変化は様々であり、膵炎発症の原因は一律な発現レベル低下によるものではないと考えられた。変異体発現による細胞死誘導がみられるかも293T細胞での強制発現系で評価したが、単純な強制発現のみで細胞死に至る変異体は現在のところみられていない。 新たな研究計画の基盤として、同遺伝子のマウスホモログ遺伝子のconditional knockoutを実現するべく、イントロン領域にloxP配列を導入したflox体の開発にも着手した。ゲノム編集技術を用いての導入を行うため、除去した際に遺伝子機能が大きく損なわれるエクソンの選択を膵炎患者にみられた変異部位に基づき選定する予定である。本研究計画の実施により、これまで知られていなかった新たな膵炎関連遺伝子が同定された。本遺伝子変異による膵炎発症メカニズム解明のための基礎検討も進んでおり、今後の発展が期待される。
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