悪性胆道狭窄に対して胆管カバード金属ステントは標準的治療である。しかし、ステント内腔が胆泥で閉塞し、再治療が必要となる場合がある。胆泥はステント 表面に宿主由来の蛋白が付着し、その蛋白を介して細菌が付着することによって形成されることが推測されている。既にFDAで認可され蛋白吸着予防効果のある ポリ2メトキシエチルアクリレートをカバードステントにコーティングすることによって胆泥付着を予防できる可能性がある。 そこで申請者は、胆泥付着予防のポリマーコーティングを施したカバードステントを当大学工学部と株式会社パイオラックスメディカルデバイスとの共同研究によって開発した。そのポリマーコーティングカバードステントの生体安全性をミニブタ胆管にステントを留置し、経時的な血液検査と胆管病理標本を用いて評価した。平成29年度はミニブタ計12匹に対して内視鏡的に胆管ステントを留置した。新規ポリマーコーティングステントにおいて、6か月間に黄疸や肝機能障害を認めず、胆管への炎症細胞浸潤もほとんど認めず、安全性を示唆する所見であった。平成30年度はすべての結果を解析し、その結果を用いて薬事申請を行い、治験なしで承認を得た。同時に論文投稿の準備を進めた。平成31年度は機序論文と動物実験論文と2報にわけて作成、まずは機序論文を投稿した。機序論文がpublishされた後、動物実験論文を投稿する予定。ステント自体は生産ラインを確保するのにやや時間を要しており、2022年秋に販売予定。
|