胃表層上皮での遺伝子改変を起こすTff1-Creマウスを用いて、3種の胃仮性性変化および1種の胃噴門癌モデルを作成した。 Tff1-Cre;LSL-KrasG12Dマウスでは、3ヶ月で萎縮、過形成、化性性変化(偽幽門腺化性、SPEM)、炎症性変化(特にF4/80陽性細胞の増加)を認めたが、12ヶ月までの観察ではdysplasiaや癌は認められなかった。同マウス胃体部のオルガノイド培養では、上記の組織学的変化をよく模倣していた。Tff1-Cre;Pten f/fマウスでは、Tff1-Cre;LSL-KrasG12Dマウスに酷似した組織像を認め、免疫組織化学でRAS-MAPKシグナルの活性化(ERKのリン酸化)を認めたことから、化成性変化の発生にどうシグナル経路が重要であることが示唆された。Tff1-Cre;Cdh1 f/fマウスでは、4週までは上皮の剥奪と著名な炎症および再生成変化を認めるが、時間経過とともに扁平上皮が腺上皮を置換していき、12週では胃全体が扁平上皮で覆われた。このフェノタイプは扁平上皮化成のモデルとなると考えられた。化成性変化モデルについてはJournal of Pathology誌に報告した。 Tff1-Cre;LSL-KrasG12D;Tgfb f/fマウスでは扁平上皮、腺上皮の境界部に腺扁平上皮癌を生じ、噴門癌のモデルとなると考えられた。同マウスは他の噴門癌モデルと合わせて解析を継続中である。
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