研究課題/領域番号 |
17K15929
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥新 和也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40753918)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 胆汁酸代謝 / BSEP / コレステロール代謝 / LDLR |
研究実績の概要 |
本研究では、①BSEP発現調節によるNASH病態の再現とそのメカニズムの解明、特に栄養負荷との協調により肝細胞の恒常性が破綻する要因の解明、②BSEP発現低下に起因するヒトNASH病態模倣モデルマウスの確立、③当モデルマウスを用いたBSEPを標的とする新規治療の検討を期間内の中心的な目標と定めているが、平成29年度に引き続き、平成30年度中に主に①②の部分で一定の成果を得ることができた。 BSEPの発現調節においては、2通りの遺伝子発現制御方法を用いており、一つはsiRNAを用いたBSEPのマウス生体内(in vivo)でのノックダウン(KD)テクニック、そしてもう一つはBSEPノックアウト(KO)マウスの活用である。 前者について、平成29年度にsiRNAによるBSEPの抑制によりコレステロールの取り込みを司り肝内のコレステロール濃度上昇を来すlow-density lipoprotein receptorの発現亢進が生じており、NAFLD発症の一因となっている可能性を見出したが、平成30年度において組成の異なる高脂肪食でも同様の結果が得られることを確認でき、現在学術論文としての報告に向けて知見を集積中である。 後者のBSEP KOマウスにおいても進展があり、BSEPをヘテロでKOしたマウスへの高脂肪食投与により、20週齢の時点で著明な脂肪化に加えて、組織学的に線維化を示唆する所見が得られており、ヒトNASHとの類似点・相違点についてより詳細な形態学的評価、そして分子レベルでの発現変化について現在検討を進めている。 ②のモデルは、BSEPのHomo KOマウスと比較して、発現低下の程度がより生理的であり、繁殖も比較的容易である。組織・分子レベルでのヒトNASHとの類似性が確認できれば、③の新規NASHモデルマウスによる治療法の開発に活用していくことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①BSEP発現調節によるNASH病態の再現とそのメカニズムの解明、特に栄養負荷との協調により肝細胞の恒常性が破綻する要因の解明、②BSEP発現低下に起因するヒトNASH病態模倣モデルマウスの確立、③当モデルマウスを用いたBSEPを標的とする新規治療の検討を期間内の中心的な目標と定めているが、平成30年度中までに主に①②の部分で一定の成果を得ることができている。 BSEPのマウス生体内(in vivo)でのノックダウン(KD)テクニックを用いた検討では、BSEP発現抑制が高脂肪食負荷と連関して、肝内脂質過剰を来すメカニズムについて知見を集積することができている。 BSEPノックアウト(KO)マウスでの検討でも、BSEPをヘテロでKOしたマウスへの高脂肪食投与により、20週齢の時点で著明な脂肪化に加えて、組織学的に線維化を示唆する所見が得られており、新規NASHマウスモデルとなり得ると考えている。 BSEPヘテロKOマウスは、ホモKOマウスと比較して、発現低下の程度がより生理的であり、繁殖も比較的容易である。組織・分子レベルでのヒトNASHとの類似性が確認できれば、最終的な目標である③新規NASHモデルマウスによる治療法の開発に活用していくことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、①BSEP発現調節によるNASH病態の再現とそのメカニズムの解明、特に栄養負荷との協調により肝細胞の恒常性が破綻する要因の解明、②BSEP発現低下に起因するヒトNASH病態模倣モデルマウスの確立、③当モデルマウスを用いたBSEPを標的とする新規治療の検討を期間内の中心的な目標と定めている。 これまでに一定の知見を集積できている①②、特に①については早期に学術論文としての報告に進んでいきたいと考えており、データの再現性確認などを進めていきたい。 ②BSEPノックアウト(KO)マウスでの検討でも、BSEPをヘテロでKOしたマウスへの高脂肪食投与により、20週齢の時点で著明な脂肪化に加えて、組織学的に線維化を示唆する所見が得られており、新規NASHマウスモデルとなり得ると考えている。BSEPヘテロKOマウスは、自身の経験上、非常に産まれにくいBSEPホモKOマウスと比較して、発現低下の程度がより生理的であり、繁殖も比較的容易である。当モデルマウスの組織・分子レベルでのヒトNASHとの類似点・相違点の評価が肝要と考えており、この部分を平成31年度前半に中心的に行っていきたい。 これらの点が確認・整理できれば、最終的な目標である③新規NASHモデルマウスによる治療法の開発に活用していくことができると考えており、有望な化学物のスクリーニングを平成31年度後半で行うことを目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスを用いた検討において、当初繁殖が順調に行われず、この問題については、飼育施設の専門家と相談して飼育環境をより他の研究者の出入りの少ない静かな環境とすることで解決したが、十分な匹数を得るのに長期間を要したため、平成30年度の予定額から繰り越しが生じた。 これらを平成31年度に、主に組織・分子レベルでのヒトNASHとの類似点・相違点の評価に関する実験で使用する予定であり、さらに最終的な目標である③新規NASHモデルマウスによる治療法の開発に活用し有望な化学物のスクリーニングを平成31年度で行うことを予定している。
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