研究課題
肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では、根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発し、再発率は年間約20-25%、5年では70%以上に上ることから肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながるための基礎研究が重要である。肝線維化の病態形成の基盤となる慢性炎症に着目し、申請者の施設で開発した高脂肪動脈硬化食(Ath+HF)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝発癌モデルマウス(Matsuzawa N.Hepatology. 2007 Nov;46(5))を用いて継時的に解析を行い、肝線維化・肝発癌に対する新規治療標的を探索した。非アルコール性肝炎(NASH)による慢性炎症病態が進行するにつれて肝組織のAtg16L1 由来オートファジーが抑制されていることを発見した。オートファジーは、細胞内で蓄積された無駄なタンパク質を分解し、アミノ酸等の栄養に変換する現象である。新規肝細胞癌再発抑制薬ペレチノインは、Atg16L1 の発現増加およびオートファジーを活性することで炎症抑制に働き肝細胞癌の発癌を抑制した。ペレチノインは、CEBPαを介してヒトAtg16L1のプロモーターを活性を亢進することでAtg16L1の発現を増加させた。さらに、Atg16L1の発現増加は、オートファージー非依存的にIL6受容体Gp130の脱リン酸化することでp-stat3(Tyr705)を抑制することで炎症抑制に働くことを解明した。
2: おおむね順調に進展している
肝線維化の原因である肝星細胞には、Atg16L1の発現増加させると筋線維芽細胞になり細胞外マトリックス(ECM)沈着を有意に亢進することがわかった。肝星細胞に対するオートファージーは逆に線維化を増悪させる。今回使用したペレチノインの肝星細胞に対する効果は、以前の我々の論文でSp1を介してPDGFRα/βの発現抑制することで肝線維化・肝発がんを抑制することを報告している。
血管内皮細胞・類洞内皮細胞でのAtg16L1由来オートファージーがどういう影響を及ぼすかを検討する。Rosa26-EYFPマウスやRosa26-Tdtomatoマウスに類洞内皮細胞のマーカーであるLyve-1やCDH5(Ve-cadherin) creマウスと掛け合わせを行い、血管内皮細胞・類洞内皮細胞に対するオートファージーの機能を解明していく。
マウスの管理を一緒に行っている実験補助者とマウスの実験計画をこまめに伝えられるよう実験ノートおよび付箋を購入したいと考えている。様々なマウスの餌があり、さらに多数のモデルマウスがあるため間違えないよう工夫をしていきたい。
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