研究課題
本研究の最終目標は、免疫学的観点から個々の患者に最適な医療を提供することで、難治性である消化器癌の治療成績向上に寄与することである。平成30年度は、主な研究テーマである「肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫反応の意義の解明」について、これまでに構築した研究実施体制に基づき、別途策定した研究計画に沿って、以下の①~③の研究を実施した。①:肝細胞癌と診断されて切除が行われ、病理診断後に保存された病理検体を用いた、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的な染色、②:フローサイトメトリーを用いた患者の保存末梢血単核細胞の免疫担当細胞の腫瘍抗原特異的な免疫反応の解析、③:患者の臨床病理学的因子に関する情報の収集。以上のように、腫瘍に浸潤した免疫細胞の数、特性、局在を評価することで、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的なプロファイルが得られた。一部の表面抗原については、平成31年度に実施予定であった、患者の治療効果及び予後に関する情報の収集を行い、特定の表面抗原の発現が認められる免疫担当細胞の腫瘍内部への浸潤が,治療後の無増悪生存期間及び生存期間と関連しているとの知見が得られた。当該知見は平成30年11月にサンフランシスコで開催されたアメリカ肝臓学会(AASLD:American Association for Study of Liver Disease)で発表した。また、切除後再発し化学療法を実施した症例において、免疫担当細胞の腫瘍内部への浸潤と化学療法の治療成績との関連が認められた。これらの所見は、腫瘍因子のみならず、患者の抗腫瘍免疫反応により、治療効果や患者予後が異なる新たな可能性を示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、主な研究テーマである「肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫反応の意義の解明」について、これまでに構築した研究実施体制に基づき、別途策定した研究計画に沿って、以下の①~③の研究を実施した。①:肝細胞癌と診断されて切除が行われ、病理診断後に保存された病理検体を用いた、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的な染色、②:フローサイトメトリーを用いた患者の保存末梢血単核細胞の免疫担当細胞の腫瘍抗原特異的な免疫反応の解析、③:患者の臨床病理学的因子に関する情報の収集。以上のように、腫瘍に浸潤した免疫細胞の数、特性、局在を評価することで、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的なプロファイルが得られた。一部の表面抗原については、平成31年度に実施予定であった、患者の治療効果及び予後に関する情報の収集を行い、特定の表面抗原の発現が認められる免疫担当細胞の腫瘍内部への浸潤が,治療後の無増悪生存期間及び生存期間と関連しているとの知見が得られた。当該知見は平成30年11月にサンフランシスコで開催されたアメリカ肝臓学会(AASLD:American Association for Study of Liver Disease)で発表した。また、切除後再発し化学療法を実施した症例において、免疫担当細胞の腫瘍内部への浸潤と化学療法の治療成績との関連が認められた。
本研究では、別途策定した研究計画に沿って、下記①~③の研究を平成31年度に実施する予定である。①:患者の治療効果及び予後に関する情報の収集②:腫瘍に浸潤した免疫細胞の腫瘍関連抗原に対する免疫反応の検討③:腫瘍に対する薬剤の抗腫瘍効果の検討上記検討によって得られた結果を、平成30年度までの検討により局所の抗腫瘍免疫反応によってグルーピングされた患者群間で比較することにより、腫瘍局所に浸潤した免疫細胞に基づく新たな観点から肝細胞癌の新分類を作成し、治療の選択等に新たな情報を提供することができる。また、既存治療の個別化及び免疫療法の効率的な開発が可能になる。
上述の如く予定通り研究は進んでいるものの、次年度に比較的費用を要する研究を予定していることから、少額ではあるものの本年度の残額は次年度に使用させていただきたいと考えている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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