研究実績の概要 |
5-アミノサリチル酸 (5-ASA) は、炎症性腸疾患の基本薬剤として寛解導入治療から寛解維持治療まで幅広く使用されている。マウスに5-ASAを経口投与する事で、大腸粘膜固有層のTreg細胞が顕著に増加する事を見出した。 初年度は、5-ASAが大腸粘膜固有層のTreg細胞を増加させるメカニズムを明らかにする事を目的とし、解析を行った。5-ASAが、大腸の造血系細胞のAhR (aryl hydrocarbon receptor) 経路を活性化していること、この活性化に伴い、大腸において活性型TGF-βが増加することで大腸粘膜固有層のTreg細胞が増加し、DSS腸炎が抑制されることを示した。具体的にどの造血系細胞のAhR経路が活性化されるかは今後の課題である。以上の内容は国際誌で報告した (Oh-oka K. et al., C.M.G.H., 2017)。 最終年度は、これまでに我々が見出したAhRを活性化する機能性食品や乳酸菌をマウスに経口投与することで大腸粘膜固有層のTreg細胞の割合が増加するか否か解析を行ったが、Treg細胞の増加は見られなかった。AhRシグナル経路はリガンドの種類や量によって異なるといった報告が多くあるので、今後もスクリーニングを行う予定である。 また、大腸粘膜固有層のTreg細胞の割合を増加させることでアレルギーを抑制できるか解析を行った。マウスに5-ASAを経口投与し、大腸粘膜固有層のTreg細胞の割合が増加したことを確認した上で、卵白アルブミンを用いて食物アレルギーモデルマウスを作製し、解析した。5-ASA投与によって食物アレルギーの病態は減弱し、この減弱は、大腸粘膜固有層のTreg細胞の割合が増加しないAhR欠損マウスでは見られなかった。この結果は、5-ASAのdrug repositioningの可能性が期待できるものである。
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