研究課題/領域番号 |
17K15936
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久保田 全哉 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (90542407)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 肥満 / メタボリック症候群 |
研究実績の概要 |
大腸発癌には癌抑制遺伝子の変異が深く関与していることが知られているほか、肥満や糖尿病をはじめとするメタボリック症候群に伴った病態と大腸癌の発癌・進展との関連性も明らかになってきた。すなわち大腸癌は、遺伝子異常とともに、肥満・生活習慣病といった環境的素因に起因する悪性疾患と考えられる。 上記の遺伝子異常と肥満・糖尿病に関連した分子異常の相互作用を検証するため、APCヘテロ変異を有するC57BL/6J-ApcMin/+(Min/+)マウスと、レプチン受容体変異により肥満・2型糖尿病を呈するC57BLKS/J-+Leprdb/+Leprdb(db/db)マウスを交配し、新規肥満関連大腸発癌モデルである「db/db-Min/+マウス」を作成した。このマウスは、対照であるdb/m-Min/+ マウスおよびm/m-Min/+ マウスと比較し、肥満・高血糖・高インスリン血症・脂質異常症を発症すること、および大腸および小腸における腺腫発生個数が有意に増加することが判明した。さらに、大腸粘膜の解析によってIGF/IGF-1R経路の過剰活性化が示唆された。そのため同マウスは、APCの遺伝子異常と肥満・インスリン抵抗性・脂質異常症を併発する、ヒト大腸発癌、特にメタボリック症候群を基盤病態とした大腸発癌を反映した動物モデルであると考えられた。 このマウスを用いて、治療的効果が期待できる薬剤の1つであるメトホルミンを投与する実験を行ったところ、腸管ポリープの発生数が減少した。メトホルミンは糖尿病治療薬であり、また、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を介した抗腫瘍作用が様々ながん種において報告されているため、今回の実験において、インスリン抵抗性の改善を介した間接的な作用とともに直接的な腫瘍抑制効果を示した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物によるモデルの作製とその解析については順調に推移している。また、miRNA解析のためのサンプル収集、および予防的・治療的効果が期待できる薬剤、植物由来化学質の作用についても順次検討やその準備がすすめられている。
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今後の研究の推進方策 |
モデル動物を用いて引き続きmiRNA解析のためのサンプル収集を行う。また、大腸粘膜における遺伝子発現の変化やタンパクの相互作用、細胞内シグナルの変化について解析を行う。特にWnt/βカテニン/Tcfシグナルの標的分子の発現変化について、大腸腫瘍部および非腫瘍部の組織を用いて免疫染色やリアルタイム定量PCR等により詳細な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度は最終年度であり、更なる詳細な実験を計画しており、平成30年度以上に費用が必要となると考えられ、次年度への繰り越しが生じた。 支出用途としては実験器具、試薬の購入費用、また成果発表のための学会参加費、旅費などを検討している。
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