研究実績の概要 |
B型肝炎肝細胞癌切除検体非癌部(未治療5例、核酸アナログ治療3例)および肝生検余剰検体(未治療24例、核酸アナログ治療5例)をHBsAgに対する抗体を用い免疫染色を施行した。37例中34例でHBsAg陽性細胞とHBsAg陰性細胞は混在した。未治療のB型肝炎患者肝組織ではHBsAg陽性細胞比率は血清HBV DNA値(r=0.59, p<0.05)およびHBsAg値(r=0.45, p<0.05)と有意な相関関係を認めた。核酸アナログ治療例では未治療例と比較し、HBsAg陽性細胞比率は有意に低かった。 B型肝炎肝細胞癌切除検体非癌部(n=3)のHBsAg陽性細胞およびHBsAg陰性細胞をLaser Microdissection法を用い採取し、それぞれよりRNAおよびDNAを抽出した。本研究ではパラフィン固定ホルマリン包埋ブロックを用いるため、抽出したRNAの量をQubitで、品質をバイオアナライザーを用いDV200値にて評価した。RNAの量はHBsAg陽性および陰性の領域面積により異なるが、110ngから450ng程度抽出可能であった。RNAの品質はいずれの検体もDV200値は30以上であり、次世代シーケンサーを用いた網羅的な遺伝子発現解析(RNA-Seq)が可能であった。 RT-PCR法にてpregenomeRNA(pgRNA)およびcccDNAを解析した。HBsAg陽性細胞ではHBsAg陰性細胞と比較し、pgRNA およびcccDNAは有意に高かった。RNA-Seq解析を行い、paired t検定にてcut off値を0.01未満に設定すると、2倍以上の発現変化を認めた遺伝子は21個選択された。このうち7遺伝子はHBsAg陽性細胞において発現が上昇しており、14遺伝子はHBsAg陽性細胞において発現が低下した。
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