研究課題
前年度よりKras変異肝発癌モデルマウス(KrasG12Dマウス)おいて肝細胞特異的にCTGFを欠損させたマウスを作成を行っていた。本年度は8カ月齢における表現型解析を行ったところ、CTGFの欠損により肝癌の増大進展が抑制されることが明らかとなった。またKrasG12Dマウスに対しCTGFの中和抗体を投与した際の表現型について解析したところ、CTGF欠損マウスほどの肝癌抑制効果は得られなかったが、中和抗体の投与により腫瘍増大が抑制される傾向を認めた。これらの結果から、CTGFは肝癌の増大進展を促進していることが示された。またヒト肝癌切除検体において癌部でのCTGFの発現量と腫瘍背景因子との関連について検討した。前年度の検討において、CTGFは非癌部に比し癌部で高発現していることが明らかとなっていたが、本年度の検討によりCTGFを高発現する肝癌は臨床的悪性度の高い病変であることが明らかとなった。CTGFが肝癌の進展を促進する機序について細胞株を用いて検討した。前年度の検討により、肝癌細胞株のCTGFの発現を変化させても増殖能は変化しないことが明らかになっていたため、本年度は肝癌組織中に存在する肝星細胞による腫瘍間質反応に着目して検討した。その結果、CTGFを高発現する肝癌細胞株は肝星細胞と共培養/共接種すると増殖が促進されることが明らかとなった。その機序として、肝癌細胞の産生するCTGFが肝星細胞からIL-6等のサイトカインを分泌させ、肝癌細胞の増殖を促進することが明らかとなった。以上の検討により、前年度における検討と併せて、CTGFは肝癌細胞と肝星細胞の腫瘍間質反応に関与して肝癌の増大進展を促進する分子であることが示された。本研究内容は複数の学会にて発表するとともに、Cancer Research誌に論文発表を行った。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Cancer Research
巻: 78 ページ: 4902-4914
10.1158/0008-5472.CAN-17-3844.