研究実績の概要 |
当該年度中に切除不能の進行肝細胞癌に対してレンバチニブの使用が可能となった。そのため、当該年度は当院で2018年4月から11月にレンバチニブを導入した症例を対象に、腫瘍循環DNAの解析と並行し、治療開始前の年齢、性別、血算、生化学検査等の臨床背景、療開始前および開始後2週間目のAFPとともに、治療開始前の血管新生や増殖因子に関わる22の血清サイトカインおよび血管新生因子(CAFs; cytokines and angiogenic factors)をマルチプレックスルミネックスアッセイにより測定し、治療効果との関連を解析した。治療効果判定は、治療開始4週と以降毎月毎にmRECISTにて判定を行った。ルミネックスアッセイにはHuman Luminex Assay kit (R&D systems, Minneapolis, USA)を用いた。測定項目は、レンバチニブの治療標的であるVEFGR, FGFR, PDGF, KIT, RETの経路に関連するCAFsを選択した。内服開始から4週間の間に76%の症例が減量または中止が必要であったことから、Relative Dose Intensity (RDI)の低下による腫瘍の増悪と、生物学的に奏功しないことによる増悪は区別する必要があると考えられた。研究者らはまず、2週間毎のRDIを算出した結果、3-4週目にかけてRDIが大きく低下することが明らかとなった。また、3-4週目のRDIが70%未満の症例は70%以上の症例と比較し、有意に無増悪生存期間が短いことが明らかとなった。治療開始前のサイトカインと、3-4週目のRDIを比較したところ、3-4週目にRDIが70%未満に低下する症例に特徴的な血清サイトカインのパターンが同定された。生物学的な腫瘍の奏功性に関連するサイトカイン及び腫瘍循環DNAについては現在解析中である。
|