これまでに骨髄細胞から肝細胞への分化評価モデル(GFP/CCl4モデル)の研究を行い、肝機能と生存率の回復、肝線維化改善について報告し、骨髄細胞投与により硬変肝が修復されることを報告してきた。本研究は肝硬変における肝星細胞のエネルギー代謝に着目した基礎的研究を行うことで、肝星細胞の活性化制御による肝線維化改善、さらには肝硬変治療につながる新たな治療法開発を目的とした。 肝星細胞としてHHStec細胞とLI90細胞を使用した。肝星細胞活性化に関わる分子をプラスミドベクターを用いた過剰発現もしくはsiRNAでノックダウンした細胞を作製した。肝星細胞の活性化のマーカーであるαSMAやコラーゲンの発現を指標とし、肝星細胞の活性化状態の評価、ATPの濃度変化、細胞の増殖性などを解析した。さらに効果があることが期待された遺伝子については、ノックダウンした株のマイクロアレイ解析を行い遺伝子発現の網羅的解析を行った。さらにメタボローム解析を行い代謝の改変を詳細に解析した。 αSMAやコラーゲンの発現を指標とし、肝星細胞の活性化に関わるエネルギー代謝、すべてのアデニル酸キナーゼアイソザイム(AKiso)をノックダウンし評価を行ったところ、アデニル酸アイソザイムB(AKisoB)が肝星細胞活性化と関係が深いことを見出した。マイクロアレイ解析においてAKisoBをノックダウンするとαSMAが2.7倍、Col1A1が2.1倍に増加することを確認した。AKisoBをprotein Aにつけたカラムで精製すると、AKisoBが濃縮された。さらにウエスタンブロッティングで評価したところAKisoのバンドの他にいくつかのバンドが確認された。本研究により肝硬変の線維化改善治療薬の創薬、および肝線維化のメカニズム解析につながってゆくことが期待される。
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