研究実績の概要 |
c-Rel inhibitor である IT-901 を用いて, c-Rel 阻害が低酸素環境下で膵癌細胞の増殖や, 上皮間葉転換, 幹細胞様性質を抑制させることで抗腫瘍効果を有するかを検討した. 平成29年度低酸素環境下でIT-901が膵癌細胞株の増殖能, EMT, 幹細胞性質を抑制することを示した. 平成30年度は担癌マウスに対するIT-901 の効果の検討を以下の方法で行った. 1. HIF-1α, c-Rel を発現する担癌マウスに対し, IT-901 を投与し, c-Rel の発現抑制効果を検討した. 2. IT-901 の抗腫瘍効果を IT-901 未投与のマウスとの比較で検討した. 3. 担癌マウスに対する IT-901 併用抗癌剤投与の効果の検討した. 4. Xenograft モデルによる転移の有無と生存期間の検討:膵癌の Xenograft モデルを作製し, IT-901 併用と未併用での抗癌剤投与の効果を転移の有無や生存期間で評価した. 5. 有害事象も検討した. これらの検討から, IT-901は低酸素下でc-Relを阻害し, 癌の増殖や上皮間葉転換, 幹細胞様性質を抑制することでマウスモデルで転移の抑制, 生存期間の延長効果を有することがわかった. 有害事象に関しても, 特記すべきものは認めなかった. これらの結果から, 膵癌に対するあらたな作用機序を有する治療法の一つとなる可能性が示唆された. IT-901未投与と投与したモデルにおいて, 腫瘍細胞内で変化した下流因子をマイクロアレイ, RNA sequence を用いて網羅的解析を行う予定であったが, 未提出である.
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