研究課題
1つ目の課題である、SOF/LDV治療不成功例における耐性変異の検討についての検討。ウイルス再燃時の患者血清から、HCV-RNAを抽出し、相補的DNA (cDNA)作成。このcDNAを鋳型としてNS5B領域のPCRを行い、ダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定し、NS5B A207T/A218S/C316Nの塩基配列を有するPCR産物と治療成功例のNS5B A207/A218/C316の塩基配列を有するPCR産物をBglIIで処理してLigation、大腸菌を形質転換させてそれぞれのクローンを10コロニーほどピックアップ、ミニプレップ後で増幅後、プラスミド精製。その後このNS5Bの配列をBglII fragmentをCon1レプリコンに挿入した。Huh7細胞をG418存在下に3週間培養し、NS5B A207T/A218S/C316Nの塩基配列とNS5B A207/A218/C316の塩基配列を有するレプリコンRNAを複製した。変異株は野生株と同程度にSOFによる複製能低下を認め、またSOFのEC50は野生株305.6nM、変異株181.3nMと変異株は野生株と同程度であった。2つ目の課題である、ウイルス排除後の肝発癌検討について、現在順調にSVR症例のゲノムを全国多施設から収集しており、現在約1700例収集している。我々はIFNベース治療でSVR後発癌に寄与する因子としてTLL1 (rs8099917)遺伝子多型 を報告したが、約1100例においてTLL1遺伝子多型の解析を行った。ウイルス排除後観察期間中央値が93週(約2年)と短いため、累積発癌率には現在有意差は認めないものの、TLL1 (rs8099917) AA群ではAT+TT群に比べ治療前、治療後とも血小板が高くFib4が低値、また治療前M2BPGiが高値であり、AT+TT群は線維化進行例が有意に多かった。
2: おおむね順調に進展している
1つ目の課題である、SOF/LDV治療不成功例における耐性変異の検討について、NS5B変異株のレプリコン解析が終了した。治療不成功例の患者血清から抽出したHCV-RNAで多く認めた207T+218S+316N変異変異株のレプリコン解析を行った。SOFにより207T+218S+316N変異変異株は野生株と同様に複製は低下し、またEC50も同程度であり、207T+218S+316N変異変異株はSOF耐性に否定的であった。この結果については、JDDW2017で発表をおこなった。またDAA治療不成功例におけるNS5A変異、NS5B薬剤耐性変異に関して、日本肝臓学会総会、抗ウイル療法学会総会にて発表を行った。また2つ目の課題であるSVR後発癌に寄与する因子の検討についても順調にゲノム収集が進んでいる。現在1700例ほどのゲノム検体を収集している。また臨床データの収集にも取り組んでいる。今後はさらにゲノム収集症例数を増やして、臨床データと合わせて、IFNベース治療でSVR後発癌に寄与することが報告されたTLL1遺伝子多型について、DAA治療例におけるTLL1遺伝子多型と発癌率や治療後の肝線維化改善率など検討を予定している。
SOF/LDV治療不成功例における耐性変異の検討について、NS5B領域の207T+218S+316N変異変異株はSOF耐性を認めなかったが、NS5A領域の耐性性変異株が同時に存在する場合の検討なども予定している。さらに、SOF/LDV療法不成功例や、2017年に使用可能となったグレカプレビル/ピブレンタスビル療法における治療不成功例のウイルス学的検討などを行い、HCV患者の効率的な治療法選択に役立てることを目標とする。DAA治療症例におけるウイルス排除(SVR)後肝発癌に関わる遺伝要因や肝線維化修復に関わる遺伝子の検討を進める予定である。IFNベース治療でSVR後発癌に寄与するTLL1遺伝子多型について、今後はさらに症例数を増やして検討し、TLL1遺伝子多型と発癌率や治療後の肝線維化改善率など検討を予定している。さらに得られた知見は日本肝臓学会、日本消化器病学会、アメリカ肝臓学会(AASLD)、アジア肝臓学会(APASL)などでの報告を目指している。最終的には、臨床データと遺伝的要因などを組み合わせて、HCV排除後の発癌高リスク群の囲い込みを目標にしている。
国際学会への出張がなく、旅費の使用が少なく、本年の使用額が少なくなった。次年度にはアジア肝臓病学会(APASL)など国際学会での成果発表を予定している。検体の収集数を増やし、DAA治療後発癌のリスク因子の検討のために、さらなる解析を予定している。
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