昨年までの検討により、卵巣摘出による骨量減少モデル動物(OVX マウス)においては腸内細菌の変化があることがあきらかとなっている。結果としては、小腸細菌叢よりも、大腸の細菌叢の変化が顕著であり、結論として骨量減少モデル作成の影響を小腸よりも大腸の細菌叢がより強く受けることが明らかとなった。 また、OVXマウスの血漿を用いてELISAを行った検討を行ったところ、骨破壊マーカー、骨代謝マーカーともに既報通りの推移を示していることが確認されており、骨粗鬆マウスモデルとして問題がないことがあきらかとなっている。 本年は、抗菌薬を投与して腸内細菌を変化させたマウスを用いて骨密度、骨破壊マーカー、骨代謝マーカーについて再計測をおこなった。その結果、ELISAによって測定した骨破壊マーカー、骨代謝マーカーについては大きな変化をみとめなかった。そのため、腸内細菌が骨形成にあたえる影響としては限定的であると考えられた。 また、OVXマウスより採取したいわゆる骨に良くない腸内細菌を含むと想定される便を、抗生剤投与を行ったマウスに移植し、計測を行ったところ、骨破壊マーカー、骨代謝マーカーおよび骨に有意な変化はみとめなかった。 反対に、抗生剤処置を行ったOVXマウスに正常マウスの糞便を移植した場合にも骨形成に対して影響は認められなかった。 以上の結論より、OVXによる腸内細菌の変化はみとめられるが、この腸内細菌の変化自体は、骨形成に対して大きな役割を果たしていないと想定されることが明らかとなった。
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