研究課題
VEGF-Bは2型糖尿病や異所性脂肪蓄積に対する新たな治療標的として有望視されている。本研究計画では、肝細胞に発現するVEGF-Bが脂肪酸取り込みを促進し、脂肪肝進展因子として非アルコール性脂肪肝(NAFLD)への病態形成に関与していることを明らかにする。本年度に実施した研究成果は以下のとおりである。肝がん細胞株HepG2およびHep3Bを用いて、既存の胃潰瘍・十二指腸潰瘍治療薬であるランソプラゾールがVEGF-Bの発現量を減少させることを明らかにした。また、VEGF-Bの類似機能を持つ複数の脂肪酸トランスポーターの発現量も減少していた。さらに、アシルCoA変換酵素であるAcsl1、脂肪酸合成酵素であるFas、脂肪酸のde novo合成に関わるAcc1といった脂肪酸代謝関連因子の発現量変動も検出できた。これらの発現変動は他の胃潰瘍・十二指腸潰瘍治療薬であるオメプラゾールでは見られなかった。つまり、これらランソプラゾール処理による脂肪酸代謝関連因子の発現変動は、プロトンポンプ阻害機能以外のまったく新しいメカニズムによるものであると考えられる。今後は肝細胞におけるランソプラゾールの脂肪代謝変動メカニズムを明らかにするとともに、VEGF-Bによる脂質輸送・脂質代謝機能の生理学的意義の解明に着手する。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に予定していたほとんどすべての研究課題を達成できた。
研究課題の今後の推進方策については、当初の予定通り、肝細胞株を用いてVEGF-Bシグナルを遮断した際の脂肪酸代謝変動を明らかにする。それに並行してメタボリックシンドロームを背景に脂肪肝を発症するSTAMラットを確立する。その後、細胞レベルでのVEGF-B抑制効果を実証したランソプラゾールをSTAMラットに投与して慢性肝疾患への効果を検証する。
学会参加のための旅費が予定よりも抑えられたことで次年度使用額が生じた。差額は次年度の旅費として使用する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
International Journal of Oncology
巻: 52 ページ: 1350-1362
10.3892/ijo.2018.4291.
TheJournal of Pharmacy and Pharmacology
巻: 70 ページ: 383-392
10.1111/jphp.12870.
The Journal of Medical Investigation
巻: 64 ページ: 262-265
10.2152/jmi.64.262.
巻: 64 ページ: 250-254
10.2152/jmi.64.250.