研究課題/領域番号 |
17K15974
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
柳川 享世 東海大学, 医学部, 特定研究員 (10760291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝臓学 / 細胞周期 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
本研究は、所属研究室が独自に見出した新規の線維肝再生促進因子Opioid growth factor receptor- like 1 (OGFRL1)について、申請者がこれまでに培ってきた細胞周期・増殖制御の研究に細胞分化の観点を加えた機能解析を行う。最終的には、相互作用因子やシグナル伝達系を明らかにすることで、OGFRL1による線維化改善と再生促進機序を解明し、次世代型肝硬変治療法の開発に向けた分子基盤の確立を目的としている。初年度は、主に以下の2点について達成した。 1) 急性ならびに慢性傷害肝におけるOGFRL1の発現動態を明らかにした。まず、野生型マウスに四塩化炭素を単回投与した急性肝傷害モデル、6回投与した亜急性肝傷害モデル、30回反復投与した慢性肝傷害モデルを作製した。これらの肝組織からmRNAを抽出し、リアルタイムPCRによりOgfrl1のmRNA発現量を正常肝と比較したところ、急性、亜急性、慢性傷害肝ともに正常肝の50-70%程度まで発現量が低下していた。また、慢性障害肝に対して70%部分肝切除を行うと、Ogfrl1のmRNA発現量は更に低下することが明らかとなった。 2) 申請者らが作製した抗OGFRL1抗体を用いて前述の傷害肝組織に対して免疫組織染色を行い、肝組織内あるいは肝細胞内でのOGFRL1の局在を明らかにした。急性傷害肝では、壊死した中心静脈付近の細胞を取り囲む領域の肝実質細胞の細胞質内に、特徴的なドット状の局在が観察された。慢性障害肝では、線維束に沿った肝実質細胞の細胞質に、同様の特徴的なドット状の局在を認めた。更に、単回投与から48時間後の肝組織では分裂中の細胞の染色体上にOGFRL1が観察されたことから、染色体の複製または分配など細胞周期の進行に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生理的状態下ならびに線維化の進展や線維肝の再生に伴う肝組織中のOGFRL1の発現動態を、リアルタイムPCRや免疫組織染色により明らかにした。 またこれらと並行して、2年目以降の解析に使用できるよう、最新のゲノム編集技術であるEasi-CRISPR法を用いた複数系統のOGFRL1ノックアウトマウスの樹立も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vivoとin vitroの両面から解析を進める。まずはOGFRL1ノックアウトマウスの樹立とその解析によりin vivoでの動態や機能の解明に役立てる。同時に、OGFRL1過剰産生細胞を作製し、共免疫沈降法やGST pull-down法、質量分析法などを用いてOGFRL1と相互作用する因子の探索を行い、OGFRL1の肝再生における機能や作用機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、OGFRL1ノックアウトマウスやOGFRL1レポーターマウスの樹立を目標の1つとした。これらを維持・繁殖させるためには、1系統あたり十~数十万円を必要とする。当初の計画では平成29年度から繁殖を行う予定であったが、平成30年度以降に他の系統も合わせて大規模に繁殖させるよう計画を変更したため、次年度使用額が生じた。平30年度は、この繰り越した使用額を充て、多系統のマウスを大規模に繁殖させ、種々の実験に使用する予定である。
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