研究課題
本研究は、所属研究室が独自に見出した新規の線維肝再生促進因子Opioid growth factor receptor- like 1(OGFRL1)による線維化改善と再生促進機序を解明し、次世代型肝硬変治療法の開発に向けた分子基盤の確立を目的とした。研究実績の概要は以下の通りである。四塩化炭素投与により作製した急性ならびに慢性傷害肝におけるOgfrl1のmRNAは、急性、慢性傷害肝ともに正常肝の50-70%程度まで発現量が低下することが明らかとなった。自作した抗OGFRL1抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、急性傷害肝では壊死した中心静脈付近の細胞を取り囲む領域の肝実質細胞の細胞質内に、特徴的なドット状の局在が観察された。慢性傷害肝では、線維束に沿った肝実質細胞の細胞質に同様の局在を認めた。単回投与から48時間後には分裂中の細胞の染色体上にOGFRL1が観察されたことから、細胞周期の進行に寄与する可能性が示唆された。個体におけるOGFRL1の解析のため、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術により欠損部位が異なる複数系統のOGFRL1ノックアウトマウスを樹立した。また、内在性OGFRL1に蛍光タンパク質を融合させたレポーターマウスも作製した。現在は繁殖率や表現型の検討を行っている。また、分子機構解明に向けて、OGFRL1をエクソソームに高効率に内包させるプラスミドを作製した。これをHEK293細胞に導入してOGFRL1を産生させた結果、細胞中並びに培養上清中に分泌されたOGFRL1は、マウス血中に分泌される内因性OGFRL1とサイズが異なることが明らかとなり、内因性OGFRL1は何らかの修飾を受ける可能性が示唆された。以上の研究成果から、内在性OGFRL1の挙動をはじめとして、OGFRL1による線維化改善と再生促進機序の分子機構の一端を明らかにすることが出来た。
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Advances in Wound Care
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肝胆膵
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http://matrix.med.u-tokai.ac.jp/