研究課題/領域番号 |
17K15976
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
柿本 一城 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20589816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪由来幹細胞 / ナノ粒子 / 抗癌剤 |
研究実績の概要 |
【背景と目的】 間葉系幹細胞は骨髄・皮膚・胎盤などの体性組織のみではなく脂肪組織にも多数存在する。脂肪由来の幹細胞(Adipose-derived stem cell: AdSC)は癌組織に集積し、癌細胞の増殖抑制作用を持つことが報告されている。今回われわれは、抗癌剤を徐放化することのできるナノ粒子をAdSCに抱合させ、AdSCと抗癌剤の相乗作用による膵臓癌に対する抗腫瘍効果を検討した。 【実験方法】 AdSCはヒト脂肪組織から分離・培養して実験に用いた。生分解性ポリマーpolylactic glycolic acidに抗癌剤ピラルビシンを封入し、抗癌剤を徐放化するナノ粒子を作製した。細胞機能の観点より、AdSCと抗癌剤徐放化ナノ粒子の最適な抱合条件を検討した。次に抗癌剤徐放化ナノ粒子抱合AdSC(Pir-AdSC)とヒト膵臓癌細胞株(KP1N)を共培養し、癌増殖抑制効果を検討した。 【実験結果】 AdSCに抗癌剤徐放化ナノ粒子を抱合させたところ、AdSC自体の遊走能の低下は認めなかったが、ナノ粒子を多く抱合するほど増殖能が低下した。またKP1NとPir-AdSCの共培養を行ったところ、AdSCとの共培養と比較して有意にKP1Nの増殖が抑制された。 【考察】 AdSCに抗癌剤徐放化ナノ粒子を抱合することで、AdSCの癌増殖抑制作用と抗癌剤徐放による作用が局所的に長時間持続し、より選択的で副作用の少ない新規癌治療法となり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト脂肪組織から分離・培養した脂肪由来幹細胞(Adipose-derived stem cell: AdSC)に生分解性ポリマーに抗癌剤ピラルビシンを封入し、抗癌剤を徐放化するナノ粒子を作製した。In vitroにおいて抗癌剤徐放化ナノ粒子抱合AdSCの抗腫瘍効果を確認でき、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
NOD-SCIDマウスにKP1Nを皮下移植した担癌マウスを作製し、抗癌剤徐放化ナノ粒子抱合AdSCの移植による抗腫瘍効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干に残額が生じたため、次年度の使用費にあてさせて頂きます。
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