研究課題
遊離脂肪酸のうち、NAFLDの病態進展を促進すると報告されている飽和脂肪酸の肝臓への影響について、オートファジーと密接に関連する酸化ストレスを中心に解析した。以前、培養細胞を用いた実験では、飽和脂肪酸のみの投与で細胞障害を惹起するも、生体内を反映して不飽和脂肪酸を同時投与するとその細胞障害が消失する現象を見出していた。生体内における飽和脂肪酸の毒性を調べるためには、血中の飽和脂肪酸濃度を選択的に上昇させることが重要であり、過去の文献を参考に、パルミチン酸を直接尾静脈へ投与する手法を開発した。投与群の肝細胞には小脂肪滴形成がみられ、過酸化脂質の上昇をともなっていた。興味深いことに抗酸化酵素のうち唯一誘導されていたのがHO-1であった。HO-1のmRNAは高脂肪食餌NAFLDモデルマウスの肝臓でも、肝培養細胞へのパルミチン酸投与でも誘導されていた。そこでより詳細な検討のため、培養細胞のHO-1のgain and loss of function下での飽和脂肪酸による酸化ストレスについて解析した。その結果、HO-1の誘導は飽和脂肪酸の酸化ストレスに対して保護的に働くことが示された。これらの結果が国際誌「Nutrients (IF 4.5程度)」に掲載された。誘導されるHO-1のタンパク質の量は、パルミチン酸急性投与モデルでは上昇していたものの、NAFLDモデルでは上昇が弱かった。HO-1の誘導を負に制御するBach-1が上昇していたことから、慢性的な飽和脂肪酸暴露によるNAFLDの病態進展には、この分子が重要かもしれない。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nutrients
巻: 13 ページ: 993
10.3390/nu13030993