研究実績の概要 |
本研究は、大腸がん検診において、大腸癌家族歴(第一度近親者における大腸癌の有無)をいかに考慮すべきか検証する研究である。前年度までの研究結果より、検診受診者の年齢別に、大腸癌家族歴と大腸腫瘍有病の関係を評価する必要性が明らかとなり、最終年度となる本年度は、国立がん研究センター検診センターにて、その点を検討し、明らかにした。 具体的には、生涯初のスクリーニング大腸内視鏡検査を受ける無症候性検診受診者(40-54歳:2263名、55-69歳:2621名)を対象に、大腸癌家族歴と大腸advanced neoplasia (AN) 有病割合の関係を評価した。その結果、40-54歳の受診者では、大腸癌家族歴がある場合の大腸ANの有病割合が、家族歴がない場合よりも有意に高い(5.6% vs 1.6%, P < 0.01)ことが明らかとなった。一方で、55-69歳の受診者では、大腸癌家族歴の有無で、大腸ANの有病割合に差が見られなかった(5.8% vs 5.8%, P = 0.95)。但し、55-69歳の受診者においても、2人以上の第一度近親者が大腸癌を有する場合は、大腸ANの有病割合が17.4%と高いことが判明した。 以上より、55歳未満と比較的若い対象では、大腸癌家族歴を有する者を、家族歴がない者よりもハイリスクと考える必要があると言える。一方で、55歳以上の検診受診者については、第一度近親者二人以上が大腸癌を有するような濃厚な家族歴を除けば、大腸癌家族歴の有無で検診の対応を変える必要はないと判断される。 本研究成果について、本年度、学会(第27回欧州消化器病週間, UEGW2019など)で発表を行った。また英語論文にまとめ、報告した(Sekiguchi M, et al. Gastrointest Endosc. 2020. PMID: 32004550など)。
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