大動脈基部の血圧である中心血圧は、通常測定されている上腕血圧より重要臓器への負担を正確に反映しているとされている。若中年男性における孤立性収縮期高血圧(収縮期血圧のみが高値:ISH)は、高身長アスリートに良く見られ、上腕血圧は高いが中心血圧は低く予後良好と考えられ治療も不要とされてきた。しかし近年それに反する報告がされており、一定の見解は得られていない。さらにこれらの報告は欧米でのものであり、日本を含むアジア人と欧米人では体格に差があるため孤立性収縮期高血圧の病態にも差異が予想されるものの、アジア人における報告は皆無である。本研究は日本人若中年男性の孤立性収縮期高血圧患者の中心血圧・動脈硬化度を測定することにより、その病態・心血管疾患リスクを明らかにすることを目的とする。そして真のハイリスク患者の抽出・早期介入への第一歩になることを目指す。 本年度、目標症例数を達成し以下の結果が得られた。ISH群ではBMIや腹囲は至適血圧群と比べて大きいものの、拡張期高血圧群や収縮期拡張期高血圧群と比較すると身体活動量は多かった。ISH群の中心収縮期血圧は非高血圧群と比較すると高く、収縮期拡張期高血圧群と比較すると低かった。動脈硬化度(cfPWV)はISH群は非高血圧群より高く、収縮期拡張期高血圧群よりは低かった。しかし、年齢、心拍数、BMI、身体活動、中心平均血圧で補正するとISH群と他の群で差を認めなかった。以上の結果を原著論文として投稿、受理された。
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