研究課題/領域番号 |
17K15990
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安部 元 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (50746576)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心不全 / 心線維化 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
心線維化は心不全の独立した予後不良因子であるが、現時点で有効な治療法は存在せず臨床的に大きな問題となっている。これまで心線維化病態の進展および退縮過程を再現する病態モデルが存在せず、その病態機構解明は困難であった。私は最近、マウス後負荷誘導(心線維化形成)後に、後負荷を解除することにより線維化を退縮させるモデルの構築に成功した(心線維化退縮)。興味深いことに、心線維化形成期と退縮期に異なる極性を有するマクロファージ亜集団、M1マクロファージとM2マクロファージがそれぞれ心筋組織に集積することを見出した。さらに、私はマクロファージ特異的HIF-1α欠失マウスを用いて解析を行い、心線維化におけるマクロファージの役割について解析を行った。結果、心筋組織へのM1マクロファージ遊走にHIF-1αが重要な役割を果たすことを確認した。さらに興味深いことにM1マクロファージが心臓線維化を抑制することを見出した。また、私は、RNAシークエンスによるM1マクロファージ分泌因子の解析により、M1マクロファージがHIF-1α依存的に分泌する炎症性サイトカインが線維芽細胞活性化を抑制することを確認している。更に私は心臓に集積するM2マクロファージが心臓線維化の退縮において重要な役割を果たしているとの仮説を構築している。本研究では、心線維化形成期、および退縮期の過程で心筋組織に集積する異なる極性を有するマクロファージ亜集団を解析し、マクロファージ由来の心線維芽細胞活性化制御因子を同定する。それにより、心線維化に対する新たな治療法開発への一助とすることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M1マクロファージが低酸素領域において、HIF-1α依存的に分泌する炎症性サイトカインが心線維化を抑制するメカニズムについて、解析を進めている。そのメカニズムについての解析はおおむね順調に進展しており、近く論文の形で発表することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
M1マクロファージが心臓線維芽細胞に直接的に作用しているのかどうかの解析およびそのメカニズム解明が今後の課題であり、今後も解析を進めていく。 また、心線維化退縮期に心臓に集積するM2マクロファージの解析を進めて行くことにより、心線維化退縮期に働く炎症細胞の役割についてのみならず、心線維芽細胞の挙動についても明らかにしたいと考えている。そのためには活性化線維芽細胞特異的なマーカーとして近年periostinが注目されており、periostin creマウスの解析を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会発表や国内学会発表を行う予定であったが、論文作成準備を優先し、学会発表を行わなかった影響で次年度使用額が生じる結果となった。次年度中の論文発表を目指す。
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