研究課題/領域番号 |
17K15991
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
東島 佳毅 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 日本学術振興会特別研究員 (40780713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | miRNA / VCAM-1 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
動脈硬化は血管における慢性炎症性疾患の代表であり、心筋梗塞や脳卒中の原因として重要である。申請者は血管内皮細胞を用いた研究によって動脈硬化発症に重要な接着因子vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1)の転写制御にヒストン修飾が重要であることを明らかにしてきた(筆頭著者として論文投稿準備中)。そこで本研究ではこの研究をさらに発展させてmicroRNA (miRNA)によるVCAM-1遺伝子座のヒストン修飾制御機構を明らかにし、動脈硬化発症メカニズムの一端を解明することを目的とした。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にTumor Necrosis Factor (TNF)-αを作用させ、時系列に遺伝子発現をRNA-seqにより解析したところ、Vascular Cell Adhesion Molecule-1 (VCAM-1)やE-selectinなどの動脈硬化に関わる接着因子は刺激後1時間程度で速やかに誘導され、およそ8時間でピークに達し、24時間では発現がほぼ定常状態に戻ることが示された。そこで、VCAM-1の発現誘導に関わるmiRNAはTNF-α刺激早期で変化し、TNF-α刺激後期では変化しないと仮説を立て実験を行った。HUVECをTNF-α刺激4時間(早期)およびTNF刺激24時間(後期)した後RNAを回収してマイクロアレイ解析にて発現を調べたところ興味深いことに多くのmiRNAの発現がTNF刺激4時間でのみ減少しTNF刺激24時間では変化していなかつた。これらTNF刺激4時間でのみ減少するmiRNAの中で発現変動が大きい上位5つのmiRNAについて調べたところmiR-3679-5pはTNF-αによるVCAM-1発現誘導および単球接着を有意に抑制した。以上より、miR-3679-5pはTNF-αによるVCAM-1誘導を負に調節するmiRNAである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いてマイクロアレイ解析を行い、TNF-α刺激後早期に減少するmiR-3679-5pを同定した。さらにmiR-3679-5pがVCAM-1の発現誘導および単球接着を抑制することを明らかにした。これまでにmiR-3679-5pの機能を明らかにした報告はひとつもなく、今回の発見は非常に新規性が高いと考えられる。申請者はこれらの研究成果をすでに内藤コンファレンス、日本分子生物学会、アメリカ循環器学会、など国内外の学会で報告しており、当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
HUVECを用いたマイクロアレイ解析によってTNF-α刺激に早期応答して発現減少するmiR-3679-5pを同定した。そこで今後はmiR-3679-5pの標的遺伝子をRNAimmunoprecipitation (RIP)とマイクロアレイを組み合わせた手法で探索予定である。RIP-マイクロアレイの結果とin silicoデータベースの結果を照合して最終的に標的遺伝子を同定する。miR-3679-5pの標的遺伝子としてヒストン修飾酵素を現在想定しており、siRNAおよびCRISPR Cas9によるノックダウンおよびノックアウトの系を用いて標的遺伝子のVCAM-1発現誘導に対する影響を調べる予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に出張が合ったため予算の状況が把握できない部分が一部あり39,134円と次年度使用額が生じてしまったが、少額であり当初の予定通り消耗品の購入にあてたいと考えている。
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