研究課題
申請者は平成29年度にvascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)やE-selectin(SELE)などの動脈硬化に重要な接着因子の発現を抑制して、単球の血管内皮への接着を阻害するmiRNAとして、miR-3679-5pを見出した。当初、miR-3679-5pがVCAM-1やSELEを直接標的としてその発現を抑制すると考えて研究を進めていたが、生化学実験の結果はこの仮説を支持しなかった。そこで、平成30年度はmiR-3679-5pの標的遺伝子探索を主要な目標に掲げ研究を行った。これまで、miRNAのターゲット予測にはtarget scanやTarBaseといったin silicoデータベースに頼る手法がとられてきた。しかしながら、miRNAと標的mRNAの結合にはミスマッチが含まれる、認識配列が7塩基と非常に短く標的となり得るmRNAが数多く存在する、など様々な理由からコンピューター予測のみで標的遺伝子を同定することは困難とされてきた。そこで申請者はRNA免疫沈降およびマイクロアレイ(RIP-Chip)とtarget scanを組み合わせて解析を行い、miRNAの標的遺伝子の同定を試みた。miR-3679-5pを過剰発現させた後に、miRNA-翻訳抑制複合体(RISC complex)の主要タンパクであるArgonaute2に対する抗体を用いてRIP-Chipすることで、miR-3679-5p標的遺伝子を濃縮したマイクロアレイ解析が可能となった。得られた結果とtarget scanの照合により、転写制御に関わる複数の候補標的遺伝子が抽出された。最終的にレポーターアッセイなどの生化学実験を行い、lysine demethylase 7A(KDM7A)および6A(UTX)がmiR-3679-5pの標的遺伝子であることが分かった。現在siRNAおよびCRISPR/Cas9を用いてKDM7AおよびUTXをノックダウンあるいはノックアウトした際に、実際にVCAM-1およびSELEの発現が実際に抑制されるかどうかについて検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
申請者はRIP-ChIPを行い、平成29年度に同定した動脈硬化に関与するmiR-3679-5pの標的遺伝子として、KDM7AおよびUTXを同定した。現在、KDM7AおよびUTXの機能解析を主にin vitro、in vivo両方の系で進めている。これらの結果の一部はすでに分子生物学会、生化学会、EMBL conferenceなど国内外の学会で報告しており、当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
平成31年度は引き続きKDM7AおよびUTXの機能解析を進めると同時に、動脈硬化患者臨床検体を用いて血清エクソソーム中のmiR-3679-5pの発現変化についてsmall RNA-seqを用いて検証したいと考えている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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巻: - ページ: -
https://doi.org/10.1101/456491
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