細胞実験では、好中球細胞外トラップ(Neutrophil Extracellular Traps: NETs)によるマクロファージにおけるオートファジー活性に対する影響を解析するため、ヒト細胞株を入手し実験に用いた。ヒトHL-60細胞を好中球様細胞に分化させ、その後にコレステロールを投与しNETsを誘導した。NETsの解析のため、走査型電子顕微鏡での形態学的評価と、免疫染色法および細胞溶解液のウエスタンブロッティングでのシトルリン化ヒストンと酵素類の評価を行い、ヒストン修飾酵素Peptidylarginine deiminase (PAD) 4の非特異的阻害剤であるCl-amidine投与後に、好中球からのNETs誘導が阻害されることを見出した。さらに、ヒトTHP-1細胞をマクロファージ様細胞に分化させ、NETsとの共培養を行った。マクロファージ溶解液のウエスタンブロッティングでのMicrotubule-associated protein light chain 3 (LC3)Ⅱの発現量を定量し、コレステロールの濃度依存性にオートファジーが活性化されることを確認した。さらに、NETs投与群ではコレステロールによるマクロファージのオートファジーが抑制されていることを見出した。動物実験では、Apolipoprotein E (ApoE)欠損マウスにおいて12週間の高脂肪食負荷による動脈硬化症モデルを作成し、マクロファージにおけるオートファジーならびにインフラマソーム活性を検討した。透過型電子顕微鏡での評価と免疫染色法により、マクロファージのインフラマソーム活性化を確認した。なお、陽性コントロールとしては、自己免疫性心筋炎マウスの心筋炎組織を用いた。動脈硬化巣の組織溶解液を用いたウエスタンブロッティングにて、シトルリン化ヒストン、LC3Ⅱ、およびNLRP3発現の亢進を確認した。
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