循環器における障害細胞から分泌されるエクソソームやマイクロベシクルといった細胞外小胞は細胞質を内包するため血清そのものよりも鋭敏に細胞質内での S-グルタチオン 化の変化を検出できる可能性がある。本研究では患者の血清から分離した細胞外小胞を解析し、循環器病における S-グルタチオン化蛋白の動態および役割を解明する。具体的には循環器病患者血清から分離した細胞外小胞を用いて①S-グルタチオン化蛋白の定量、②S-グルタチオン化蛋白の同定、③S-グルタチオン化蛋 白の機能解析および循環器病の病態との関連性の検討、の3項目につき研究を遂行した。前年度の研究にて急性心筋梗塞および拡張型心筋症患者ではエクソソーム中の蛋白質S-グルタチオン化のレベルが増加していることが確認できた。今年度はこのサンプルから新規のS-グルタチオン化蛋白を検出するべく研究を推進した。まずS-グルタチオン化蛋白を検出するためHis Myc tagged GST融合蛋白を合成した。融合蛋白はS-グルタチオン化蛋白に結合し、Western blottingではS-グルタチオン化蛋白の同定が出来ることを確認した。またサンプル中のグルタチオンが融合蛋白のS-グルタチオン化蛋白への結合を阻害することを確認した。しかしながらエクソソームからS-グルタチオン化蛋白を質量解析に必要な分量を免疫沈降することはできなかった。抽出したエクソソームをライセートし電気泳動し銀染色を施行すると心筋梗塞患者でコントロールでは観察できないバンドが観察できたためこれらに対し質量解析を施行した。既知のS-グルタチオン化蛋白は認めれられなかった。現在これらの蛋白質がS-グルタチオン化される蛋白であるか培養細胞を用いて検討中である。
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