研究実績の概要 |
54人の肺動脈性肺高血圧患者のうち、除外基準から除外した残りの33人を対象とした。血清検体からVEGF-AおよびVEGF-165bを測定した。コントロール群を設定し、コントロール群と肺高血圧群で違いを評価した。結果、VEGF-A、VEGF-A165b共に肺高血圧症群ではコントロール群と比較し有意に上昇していた(VEGF-A; 232.4±125.0 vs 441.6±326.4, p=0.001、VEGF-A165b; 75.2±50.3 vs 168.1±175.3, p=0.0001)。肺動脈性肺高血圧症の背景疾患に着目した。各背景疾患毎に解析をしたところ、膠原病に伴う肺高血圧症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症においてはVEGF-A, VEGF-165b共に他の背景疾患と比較し有意に上昇していた(IPAH; p=0.432,CTD-PH; p=0.017,CTEPH; p=0.003 in VEGF-A v.s. IPAH; p=0.469,CTD-PH; p=0.001,CTEPH; p=0.01 in VEGF-A165b)。つまり肺高血圧症において血管新生促進因子であるVEGF-A、血管新生抑制因子として働くVEGF-A165b共に上昇していることが分かった。さらに特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)においては上昇はないが、膠原病に伴う肺高血圧症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症では共に有意な上昇が見られた。以上よりVEGF-AとVEGF-A165bは肺高血圧症の背景疾患の鑑別に有用である可能性が示唆された。 肺高血圧症は様々な要因で引き起こされるが、背景疾患を特定しその治療を行うことが重要である。このためその鑑別は非常に重要であるが、疾患のオーバーラップもあるため実際の臨床現場では苦慮する。本研究結果は血液検査だけでその鑑別の一助となる可能性があり有用であると考えられる。
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